Ellue さんの感想・評価

4.3
物語 : 5.0 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 5.0 キャラ : 3.0 状態：観終わった

短い夏の儚さの様な物語に感動する秀作

原作済。AIR IN SUMMER視聴済。


夏と言えば…この作品が一つに上がるような強烈なインパクトを残してくれる作品です。


1クールで3人のヒロインは無理があったとは思いますが、
それでもそれなりにまとまった作品です。
どうしてもAIR本編は1000年前に始まった神奈と柳也、裏葉の物語が
観鈴によって終結するものであり、佳乃と美凪の物語は蛇足の様に見えてしまいます。
翼人の話が絡んでいるので繋がりはあるのですが、
観鈴のそれに比べるとその関連性はかなり弱いのです。
本作も観鈴を本筋におく物語が大部分を占めており、
佳乃、美凪の物語は短くなっております。


そうは言っても、佳乃、美凪の物語の完成度も高いです。
十分単品でも勝負できる内容であると思います。
佳乃編は佳乃の一途な想いとそれを見守る姉・聖の物語。
母が子を思う気持ちに触れ感動しました。
最後には佳乃が生んでくれたことに感謝できる様になって良かったです。
本作において、唯一、純粋なハッピーエンドとなったと思われる話です。
美凪編は産まれてくることが出来なかった少女の物語。
美凪の優しさとみちるの儚さが感動を誘います。
みちるが家に帰ったところから学校の屋上での別れまで感動し続けでした。
そして、屋上での姉妹のやり取りで涙腺崩壊しました…
実際の妹の存在に繋げる、しめ方も良かったです。


summer(過去)編は後にAIR IN SUMMERと言うかたちで補填されますが、
本編だけで観るならば本筋の主要箇所のみ抜粋されており、短いと感じざる得ません。
ここだけ見るとsummer編は過酷なものに見えてしまうかも知れませんが、
追加された方まで観ると少し和める内容ではないかと思います。
母親を失い、自身も呪いを受け、空に封じ込められることになる神奈。
そして、神奈を助け出すことを子孫に託す柳也と裏葉。
ここで往人の祖先だと明かされ、法術が使える謎とかに繋がります。


そして、終章・AIR編。
往人が人形に溜まった力を開放して繋ぎ止めた観鈴のゴールまでの物語。
よーいドン！と共にAIRのロゴが入る導入部で鳥肌でした。
この作品の本髄がここにあり、前半で出ていた伏線が一気に回収されていく様は鳥肌ものです。
友達と遊ぶとか、海で遊ぶとか、何気ない事を望んでいるだけなのに叶わない。
それでも諦めない観鈴の健気さに心を打たれます。
最後、母親になった晴子と海に行き、祭りに行き、
また、晴子も誕生日プレゼントを渡すという願いも叶ったりして、
観鈴の望みは最後の最後に成就します。
そして、ずっと幸せな場所を得ることが出来ました。
よーいドン！で始まった物語が幸せな場所と言うゴールで幕を閉じます。
こういった細かい演出も素晴らしいです。
ラスト2話、特に浜辺とゴールのシーンは凄く泣ける内容です。


どうしても観鈴が全面に出ているし、解放されたといっても神奈も母を失い、
柳也や裏葉とは別れることになったのだから悲しい結末である事が真っ先に出てしまいます。
でも柳也と裏葉から始まった神奈を救い出す1000年の物語と
観ればこれはハッピーエンド。
ゴールと言う意味も含めてそう捉えることも出来るのではないでしょうか。
どの視点で観るかでラストの印象は変わると思います。


音楽は「鳥の詩」はかなり有名どころですね。
他にも夏影は流れるだけで鳥肌が立つレベルの神曲です。
観鈴のテーマ曲ですが、その儚さを増長するような曲です。
他の曲も全体的に凄いレベルを維持しています。
作画はキャラクターの方は馴染めるかが鍵になるでしょう。
ちょっと特徴が強くて、万人受けするものではないかもしれないです。
風景は非常に良くて、海辺の片田舎的な情緒もそうなのですが、
セミの鳴き声とか陽炎とか夏の表現力は特に凄いです。
また、タイトルからも空気、空を連想させますが、その空の表現が綺麗でした。


儚い短い夏の壮大な感動物語です。