とすかねり さんの感想・評価
3.8
物語 : 3.0
作画 : 4.0
声優 : 3.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
芸術は爆発らしいけど、爆発しない芸術アニメ
*ストーリー
所謂、日常系。彩井高校のGA(芸術科Aクラス)1年の5人組と、同校美術部がおりなす、日常のあれこれを描いた作品。特徴として、舞台がアートデザイン専攻クラスや美術部であるために、美術の用語や技法、特徴的な授業の風景などがあり、一般の高校にはない風景が、日常的な内容を興味深いものにしている。
内容としては特段山も無ければ落ちも無いという、作風であるが、どうしても中盤から美術部が出てきたために、軸足が拡散していることは否めない。もちろん日常系であるので、多少舞台が複数になった所で関係はないのであるが、にしても残念なのは、GA1年と美術部の絡みの少なさであろう。もはや二つの作品が存在し、それを同一タイトルで流し、時折シェアワールドしているような状態ですらある。
すこし辛めの☆3で。
*作画
AICPLUS+といえば、割合アニメ制作の老舗ではあるが、やはり高い技術力が光る作画だと言える。テーマが美術だけに、アーティスティックな技術や、模写、芸術作品へのオマージュなどが見てとれるが、しっかりと表現しきった作風と言えよう。
アニメ自体は2009年で、10年代以降の緻密なぬるぬる動く系には届かず、日常系ですら多くのカット数が要求される今の感覚だと一枚落ちる感があるが、やはり良い作画であることは認めるに十分であろう。
☆4
*声優
中堅からベテランをしっかりと取り揃えた、抜群の安定感が光る。日常系と言うものは多くの場合、キャラの声優の力が試されるもので、ちょっとしたイベントに対して大きな演技が嫌みなくできるというのは、やはり声優の力量次第と言える。その点やはりこの作品の声優陣には安心して見ていられる演技力があった。
惜しむらくは、やはり“野田の姉”役の名塚雅絵さんであろう。勿論素人である方に一流の演技を求めるつもりもないし、それは愚かであると言えるが、敢てこのキャスティングをした意味がイマイチ分からない。監督の桜井弘明の要望で出演したらしいが、やはりモブならモブなりのキャストが居たように思う。
☆3で。
*音楽
柔らかいBGMがよく合う作品で、OPの「お先にシルブプレ」も、元気なキャラ達の動きを的確に表現した良いOPだった。また、EDはキャラEDとなっており、GA1年の5人のそれぞれのEDを楽しめる。
☆4.5で
*キャラ
5人というのは、やはり日常系を中心にバランスのとれた素晴らしいキャラ数だと思う。GA1年の5人もそれぞれに安定したパワーバランスがあり、また美術部の5人もまた違ったバランスがとれているだろう。
属性も特筆すべきものがあったわけではないが、何にせよ安定していて、日常系の基本に忠実なキャラ群だったように思う。
☆4.5で
*総括
所謂、芳文社原作作品。2007年の『ひだまりスケッチ』のヒットを皮切りに、『けいおん!』の社会現象的成功を経て、同社原作のアニメ作品が爆発的に生み出された頃の作品の一つである。そういう意味ではポスト・けいおん!と言える作品群の中では序盤の作品であり、割合回収できた作品なのではないかと個人的には感じている。
また、日常系アニメの一つの形態として、「マイナーの日常」というものが存在するが、その具体例として挙げる事も出来よう。即ち、「美術学校」という、比較的マイナーな部隊設計をしておいて、内容は日常系にすることで、飽きやすい日常系に新鮮さを付与した作品に感じさせるという手法である。たとえて言うならば、自動車メーカーが、エンジン等内部機構を一切変更していないのに、外装だけ弄って、ニューモデルとして売り出すそれに似ているのかもしれない。
まぁ、兎に角多くの日常系の例に漏れず、見ていて疲れない、いい作品だったと言える。