退会済のユーザー さんの感想・評価
4.5
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
もみの木は知っている
時代のクセを感じさせない線の描き方で、いつの時代に観ても心地よいのではないでしょうか。
この世の天辺のような空に近い山の景色、山小屋の屋根裏、藁のベッド、パンとチーズとスープの夕げ、大きな犬、かわいい山羊…
憧れののびのびとした世界。
ハイジが山のおじいさんのお家に馴染んでゆく間の、暮らしぶりが染み込むような描写がよいです。
おじいさんがチーズを作ると言う時のこと。
私もやりたい!できるわ!かき混ぜておけば、いいんでしょう?ほら、こうやればいいんでしょう?
おじいさんはやや考えた後、言葉少なに、頷くとハイジに任せる。
ハイジは自信満々、コック気分で鍋を掻く。椅子の上に立って、火加減をみながら薪を足して。
しばらくすると、放牧に出ていたはずの山羊のゆきちゃんがやってくる。チリンチリーン。
どうしたの、戻ってきちゃったの?しかたがないわねえ、ペーターったらなにしてるの。
鍋をそのままに、出てしまうハイジ…
わすれんぼう入ハイジ、山でペーターと合流し、ややあってハッ!と気づき、慌てて戻ると…
おじいさんが、焦げ付いた鍋をナイフで削っている。ショリ、ショリ、ショリ。
ガーン。
おじいさんは何も言わない。
言ったかな?
お前にはまだ、早かったようだな、とか。責めはしない。
わたし…わたし、ちゃんとわかってたのに…まぜてたのに…できるはずだったのに…
どうしてこうなってしまったんだろう。
トボトボ小屋の外に出ると、山のもみの木がサヤサヤなっている。いつも見守ってくれる、山の木々たち。
日が傾いて影を宿したもみの木を、じいっ…と見あげながら、考えこむような放心したような表情で佇むハイジ。
それだけなんだけど、この見つめる間合いがすごくいいんです。受け止める、作業というか。
コロコロ笑ってる時じゃなくて、このぼうっとした時の表情とか、子供らしくてすごく好きです。
その後、いつもの調子を取り戻し、おじいさんを手伝いに戻るハイジ。
結構懲りずに物事を受け止め乗り越えていくハイジですが、途中で街に奉公に出た先で(クララの話し相手)、街やお屋敷の閉塞感に耐えられず、心の病のようになってしまって…。大殺界な感じの時期ですね。
部屋の中で山の幻をみて駆け回って気味悪がられたり。「おばあさんにもって帰ってあげたい」とタンスの中に溜め込んでいた大量の白パンが見つかっちゃって、やっぱり気味悪がられたり。
クララの寂しさを癒すためならば耐えられるわ、と気を取り直しながらも、
ちょっとウィットに飛んだことをしようものなら叱られ、窓を開け放つことすら咎められて、どんどん萎みこんでいくハイジ。
大人がわーわーカクカク仕切る、しきたりばかりのお屋敷で、もみの木との対話から自分を見つめていた山のおおらかさ、おじいさんや動物たちの暖かさをひたすら懐かしく夢見て。夢遊病にまで発展。
この子をこのままにしておいてはいけないよ、と正しくアドバイスできる大人が居たおかげで、軌道修正出来たけれど。あの人がいなかったらと思うと、ハイジの世界は紙一重で恐ろしいことになっていたのかもしれません。
その後、山に帰ることができ、クララとヒステリックな先生までやってきて、新世界に驚きながら、有名なクララが立った!になるわけだけど
時にはハイジみたいに裸足になってもみの木と語り合ってはいかがかね。そんな大人に私はなりたいです。
キャッ(//∇//)書くと恥ずかしいですな。