takekaiju さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
超絶な完成度!
冲方丁によるSF小説のアニメ化作品。
同作は、押井守の『イノセンス』と同様に日本SF大賞を受賞しており、単純に物語としても魅力的である。にもかかわらず、攻殻シリーズに比べて認知されていない気がする。
3部作のうちの第1作ということだけれど、第1部『圧縮』だけでも完成度は高い。事件の発生から経過、対決とこれでもかという要素が一時間の作品の中に詰まっている。サイバーパンクというテイストでありながらも、第1部のこの作品はアクション性が強いので、こちらの観点から観るのも面白い。
作画に関しては稀にみる丁寧さ。
ラストのアクションシーンは、キャラの動作が多くマトリックスのような実写映画を観ているような精密度だが、違和感なく楽しめる。
全体的にギブスンの『ニューロマンサー』のような近未来の世界観を上手く出ている。特に、ボイルドが誘拐屋と接触するシーンなんかはオマージュといっていいだろう。
何よりも憎いのは、ラストの演出である。
ボイルドとの対決――圧倒的に不利な状況で相棒を傷つけたバロットはそれでも立ち上がり銃口を向ける。まさにこれからというシーンでエンディングに入るので、次のシーンはどうなるのだろうと強い興味が惹かれる。第2部につなげつつも、お決まりの視聴者の想像に委ねますも有りな終わり方が好きだ。
ラストまで観てくると、サイバーパンク、ガンアクションといった要素の他にバロットの成長物語としても側面も見えてくる。あらゆるものを失ったバロットが、自分の存在理由を見つけるために相棒との対話や敵との対決を通してその答えを探していくのである。
これほど多くのものがたった一時間に詰め込まれたこの作品の完成度は極めて高い。オリジナル作品でないアニメの場合、同じシーンの繰り返しになる可能性があるので原作まで手を出すのは稀だが、この作品に限っては原作での描写も気になるところだ。