とすかねり さんの感想・評価
4.6
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
ただの感想には興味ありません!
原作先行読了で、時系列視聴(TV放映順でない)
*ストーリー
プロットとしては原作準拠。ただし上述のように、TV放映時は時系列シャッフルが行われたが、その意味は石原立也監督曰く、「原作ファンに対するサプライズ」らしい。最終話に「涼宮ハルヒの憂鬱VI」を入れることありきで、時系列をそこだけ変える位ならとシャッフルに持ち込んだらしい。
本作は、{netabare} 非現実的騒動を起こす特殊存在である涼宮ハルヒが、世界をつまらなく思う中で、エキセントリックな行動を起こす様子を、巻き込まれ系主人公が叙述するもの{/netabare}である。学園モノであり、SFであり、日常系であり、ラブコメであるという、欲張ったが巧くまとまった作品として評価できる。また、「涼宮ハルヒの憂鬱Ⅰ~VI」を典型として、セカイ系とも言える訳で、多様な切り口を持っていることが、本作の魅力であり、人気の理由ではないかと考える。
☆4で
*作画
放送は2006年の春アニメで、当時のアニメとしては非常に良いクオリティであろう。大胆な構図を含め、作画のクオリティは素晴らしい。ただしやはり時代感は否めず、現在のアーティスティックなアニメや、「ぬるぬる動く」系と比べると一枚落ちるのは已むをえまい。ただ、DVD版では部分的に放送版に修正が加えられていることや2期に合わせてブルーレイ版が出るなど、映像として改良されたものが、市場に出ていることは含み置くべきものである。
☆4で
*声優
一流の声優が集まっていることは、もはや言及するまでも無い。特に主役級キャストの出世作として名高いだろう。この頃から、声優という職業にある種のアイドル性や露出が求められるようになったという時代背景もある。所謂「第4次声優ブーム」と呼ばれるそれである。例えば同年2006年は声優アワードの第一回の年で(正確には2006年度なので授賞式は良く2007年)平野綾さんが新人賞、後藤邑子さんが助演女優賞を獲得している。
文句無しの☆5
*音楽
OP、ED、作中歌、キャラソン、ラジオ曲どれをとっても大人気だったことは言うまでも無い。特にEDの「ハレ晴レユカイ」は、所謂ハルヒダンスとともに空前絶後のブームを巻き起こした。オリコンでは1位を逃したものの、この曲を1位にしようとするダンスオフが秋葉原で開かれたことはあまりにも有名である。
また、キャラソン市場の確立期にあって、非メインのキャラソンが展開されたことは、これ以降のアニメ作品にキャラソン市場という希望を与えたのみならず、京都アニメーション自身としても、『らき☆すた』『けいおん!』へと続く、キャラソン展開のモデルケースとなったと言える。
☆5
*キャラ
属性の安定が、本作の独特な設定のキャラクターの魅力を高めている。5人というのは、多くの作品で見られるバランスのとれた人数である。未だにキャラへの愛を忘れない愛好家は多く、特に長門有希は俺の嫁宣言するものが後を絶たない。
☆5
*総括
本作に関しては、特にサブカル研究の側からの視線が熱い。ゼロ年代のアニメ史を語る上で、本作は避けて通れない。また、YouTubeの登場・普及と時を同じくすることから、所謂ネット動画・二次制作動画の爆発的拡大においても、重要な立ち位置を占める作品と言える。
原作の側面から考えると、恋愛シミュレーションを中心としたゲームのアニメ化が落ち着きを見せた時期に、『灼眼のシャナ』・『ゼロの使い魔』などとともに、ライトノベルのアニメ化が爆発的に増えるきっかけとなったことは意義深い。当時の中・高・大学生が拡大するライトノベル市場を現在も支えていることは、サブカル市場の振興にとっても、重要な意味があったのである。
また、ポスト・エヴァの代表として挙げられる事も重要である。東浩紀のセカイ系の定義「主人公(ぼく)とヒロイン(きみ)を中心とした小さな関係性(「きみとぼく」)の問題が、具体的な中間項を挟むことなく、「世界の危機」「この世の終わり」などといった抽象的な大問題に直結する作品群」というものからも、本作の基本にはセカイ系の性格があることは御理解いただけると思う。
とにかく、アニメ好きとしては一度は視聴をお勧めするし、興味があれば、同作品に関する書籍を読んでみると良いかもしれない。