jethro さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
木陰で読書
万城目 ふみ は高校入学を機に、かつて住んでいてた鎌倉に越してきた
二つの女子高を舞台に、女性同士の恋愛や友情を描く
王子様のような先輩、学校に伝わる逸話、ブロンテの演劇
そして丘の上の女子高
情熱的でロマンティック要素を凝縮したような舞台設定ですが
そよ風のささやきのように静かな、あまりにも静かな恋愛物語です。
情緒あふれる鎌倉の風景と潮騒の静寂なるざわめきは
語られる淡い恋愛の揺らぎに似ています。
主人公の ふみちゃん は恋愛にとても「素直」な女の子
言い換えれば「真面目」とも言えます。
この真面目さは、時として鋭いナイフのように
無音のまま、ざっくりと、宝石の輝きのような
切なく甘美な絆を切り落とします。
例えようのない傷、虚無感、偽りの笑顔
そんな痛みにも似た無表情までも
「これも恋愛」と語りかけてくるよう
しかしそれは本当に恋愛だったのでしょうか?
たしか「猫物語(黒)」という作品で
「知らぬうちに落ちているのが初恋だ」というセリフがあって
実はこの作品にこそ、しっくりくる感じではないのかと
ひそかに思っています。
繊細でやわらかな水彩画のようなタッチの作画は
そっとカバンの隅に置いておきたい文庫本のよう
そんな愛着がジワリと押し寄せる良作です。