AXIOM25 さんの感想・評価

4.8
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態：観終わった

映像に飲まれた末の愛

公開初日に見に行って、全体としては満足だったにも拘らず、ラストの展開に何とも言えないモヤモヤ感を感じ…
そのモヤモヤが何日も続くのでもう一度見に行った。二回見た上での感想となる。

{netabare}映像表現については最初に見た時から圧倒された。テレビ版を見た時から魔女の結界＝通称イヌカレー空間の表現に驚かされ注目していた。はっきり言ってこれが無ければ見続けようとは思わなかったと思う。
このシュール・サイケデリックなイヌカレー空間が今作では相当な割合を占めている。
また劇団イヌカレーが関わっていないと思われるシーンでも抽象的な表現が多用されている。
（*自分ではどこまでがイヌカレーの仕事なのか判別は出来ない。実際にはどのシーンも様々なスタッフのアイデアから成り立っているのだろう）
今作ではこうした表現方法を使って夢（睡眠中に見る）の世界を描いている。それ自体は特に目新しくもない、実際自分も多くの方が指摘しているように途中で「うる星やつら～ビューティフルドリーマー」を連想した。
だが今作で醸し出される悪夢感は、過去のどんな作品よりも自分の感覚に近いようで薄ら怖さがある。
例えば、魔女になる寸前のほむらが見る幻想で、うなだれるほむらを異様に背の高い人形のようなほむらが三人見下ろしている。そこに巨大なほむらの腕が振り下ろされ、うなだれるほむらが潰される。というシーン…こう書いていても何が何だか解らない滅茶苦茶なシーンに思われるが
実際に劇場で見た時、これは非常に腑に落ちるとても良く解るシーンだと感じた。多分これに近いシュチュエーションの夢を見た事があるからだと思う。
中盤から後半にかけてはこうした悪夢的表現が多く見られる。
話は前後するが、前半部分ではほむらが理想と想ったであろう、少女らしい夢の世界が画かれている。しかしそれもどこか不安感が滲み出るような奇妙さが漂っている、この辺りの塩梅は絶妙だと思う。

物語はそのふわふわとした甘い夢のような前半～違和感を感じ真相を付きとめる中盤～魔女と化したほむらを円環の理に導こうとする魔法少女たちのバトルと…ここまででも充分に見応えのある内容で、個人的には結末を知った二度目の観賞ですら感動して涙が出そうになった。
が、しかし、その後に問題の展開が待っていて、初見の時には「！！？？？？…」な状態となり、
これは蛇足ではないか？無理矢理続編を作ろうとして物語を捻じ曲げているのでは？等と否定的な感想を抱いた。
しかし一方でほむらというキャラクターが非常に魅力的に映るようにもなった。妙に艶めかしい感じを「まどか☆マギカ」全体を通して初めて感じた。
冒頭で書いたように作品としては満足感あるものだったが、見終わって数日間は非常にモヤモヤした気分だった。

で、ネット上の感想等で複数回見る事で印象が変わる、納得出来ると言う意見を見て、二度目の観賞に。
すると本当に物語の印象が変わってしまった。テレビ版（劇場版の前・後編）での暁美ほむらの印象…冷静で～時に冷徹すぎて人間味が無いほど～しかしその内面には熱い想いを秘めている…では無くて、その奥にある
彼女が元来持っている弱々しい内面～それはとても幼く愚かと言ってよいと思う～それを意識して見ると
この映画全体が悲しく切ない色で覆われている気がしてくる。
そしてラストの展開では、とても間違った方向ではあるがそれをブチ破り新しい自分を手に入れる…見ていてそこにカタルシスを感じてしまった。

この作品は暁美ほむらの内面をこれでもか！と言うほど多面的に表現しているように感じる。
それによって、このキャラクターは**系だとか**属性だとかでは括れないものになったと思う。{/netabare}

理解出来たと思ってたら、まったく別の面が見えて不可解な気持ちになる。しかし不可解だと思いつつも嫌いにはならず
もっと理解したいと思う…　…　…自分はこの作品を愛しているのだなぁ…そう結論付けて長文レビュー終わります。