Asuca さんの感想・評価
3.7
物語 : 3.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
江戸川乱歩の世界観をよく描き出している良作
江戸川乱歩の作品を読んだことのない方でも、乱歩の作品中の登場人物が怪人二十面相であることは有名だろう。
僕の記憶が正しければ、乱歩は彼の作品を通じて戦後日本の潜在的暗部、または戦後と言わず人間社会そのものに潜む暗部を描き出そうとしていたと、ある評論に書いてあった。
その観点からこの作品を見つめた際に、単なる乱歩のパロディーで終わらず、解釈の入った作品として見ることができよう。
戦後70年を迎えようとする現代において、戦争の記憶は薄れ、冷戦下の人類滅亡の危機意識も既に過去の遺物になりかけている。こうした、現代にこそフィクションではあるが、人の潜在的暗部を描き出そうとした乱歩の作品は再評価されるべきではないか。
メディアは、時代の変化を刻一刻と映し出している。かつてほどアニメーションを通じた一種の啓蒙的表現は少なくなってきているが、またそのことも、時代を映し出す鏡なのだろう。昨今の状況を考えると、商業的成功云々を無視しても、やはりこうした動きは耐えてほしくないように思う。
もちろん、以上のことは、僕自身の思い込みであることに違いはないが、兎にも角にも、今があることが素直にうれしく思えた。