STONE さんの感想・評価

4.0
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.5 音楽 : 3.0 キャラ : 4.5 状態：観終わった

危ういバランスのうえに成り立つメインヒロインの魅力

　原作は未読。
　先に書いておくと、これを書いている時点で既に2期を視聴済みで今後の展開は判って
しまっているけど、この作品単体の印象を書きたいので、敢えて先の展開を知らない体で
書いてます。

　タイトルからしていわゆる妹モノであることは判るが、兄妹間の禁断の愛的なものは表面上は
あまり出てこず、むしろ普通の兄妹愛を描いている感じで、特に兄である高坂 京介の心情は
それが強い。

　ストーリー展開や設定は他のラヴコメ作品と較べてもシンプルなもので、この作品の面白さは
キャラの魅力と、オタクライフの描写にあるのではないかと。
　キャラに関してはまずメインヒロインである高坂 桐乃が目を引くが、容姿端麗で雑誌
モデル、学業、スポーツ、文筆業に秀でると万能キャラ。
　ただ裏の顔であるオタク部分に関しては、そののめり込み方や、アニメ・漫画などで
終わらずにR-18のエロゲーにまで手を出すなど、一種の気持ち悪ささえ感じさせるような
描かれ方をしている。
　兄である京介に対する態度はよく観ていると一種のツンデレであることは判るが、
「べ、べつにあんたのことなんか好きじゃないんだからね！」的な主人公が鈍感としか思えない
ような判りやすいツンデレではなく、更にツンの部分がかなり理不尽なモノがある。
　このオタク的部分やツンデレ部分の描写は、観ている人によっては不快感を抱きそうな
感じだが、これが桐乃らしさをたらしめている部分でもあるため、桐乃の魅力は結構危うい
バランスのうえに成り立っているように思える。逆に言えば絶妙なバランスとも言えるのだが。
　この桐乃的要素は他のキャラにも引き継がれているようで、オタク的部分に関しては黒猫、
沙織・バジーナ、赤城 瀬菜が持ち合わせており、理不尽なツンデレ的部分は新垣 あやせが
持ち合わせているみたい。

　オタクライフの描写に関してはドン引きしそうな描写も多く、この作品自体が萌えアニメで
あるため、自虐的な感がある。
　で、随所で目に付くのがいわゆるオタク差別とも言うべき部分で、桐乃が隠れオタクであると
いうのも、当の桐乃自身が世間的には恥ずかしいものであるという認識を持っていることが
判る。
　このオタク差別に関してはそれなりにシリアスな要素として描かれているが、ライトな
雰囲気のコメディ作品で差別問題が出てくるとは思わなかった。
　ただリアルにはどうなんだろう？。80年代、90年代はオタクを卑下するような空気は確かに
強かったが、著名人がオタクであることを公言したり、産業的にも馬鹿にできない今では
それほどでもないような感じがする。
　結局、「好きなものが好きで何が悪い」的な肯定の仕方で締めているが、さすがに中学生が
エロゲーをやることに対しての肯定の仕方はちょっと無理があるかなあ。
　この部分に関して誤解ないように書いておくと、法律、並びに社会道徳上まずいとされている
ことを肯定していること自体は、自分自身は作品の評価としてのマイナス部分としては捉えて
いない。ただ、作品内で両親やあやせに黙認させる展開は説得力がないかなあということ。

　この作品、テレビ放送版の"GOOD END"と、ネット配信版の“TRUE ROUTE”と終盤において
ストーリーが分岐されるが、"GOOD END"の方は無理矢理締めた感が強く、“TRUE ROUTE”の
方がこの作品の真の姿が見られるように思える。
　加えて、ここで黒猫の魅力がいよいよ発揮されていく感じ。

　あと個人的には作品舞台であるJR千葉駅周辺は割と近場であるため、よく見知った
ロケーションが多く、その辺も楽しめた。