ぽぽたん さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 2.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
えぐられる傷を心に残す 問題作
物語の内容は、他の人のレビューを読んで欲しい。
完全な「鬱」作品である。
一番注目はやはり実写をトレースした「ロトスコープ」だ。
登場人物の動きは日常的なリアルを表現している。
それなら実写で良いのでは?と思うが、トレースしているからこそ
人物の表情や動作に目が自然と移り、感情が入りやすい。
ロトスコープこそが、実写では表現できない仕草からくる
感情表現だ。
作画が綺麗なアニメは当たり前なのでアニメの進化系かと。
灰色をベースのした色使い。そして人物表現の豊かさ。
気持ち悪いとの意見もあり、その考えも分かるのだが
個人的には、萌え・ロリコンアニメの、赤や青の髪色や
目が異常に大きいキャラの方がよっぽど異常で気持ち悪い。
本作のヒロインの1人である「佐伯さん」はとても自然な女性に
仕上げられちるので、こちらのキャラの方が好感的で「こんな女、いいなぁ」と思えてしまう。ロトスコープだからでしょうか。
次に衝撃であったのは、1シーン、1カットに長さだ。
物語中盤以降からは、その長さの異常さに驚く。
静止画ではなく、微妙に動きがあり、人物の想いが伝わる。
そして声優陣。とても良い。特に10話?だったかな。
山の中で3人で繰り広げられるドラマは実にすごい。
ロトスコープとそして中学生らしい感情ある会話。
もう満点だ。
で、・・・肝心な物語であるが、これが完全に現実的だ。
通常のアニメで良くある、SF、ガンアクション、超能力?
登場人物のありえない特殊能力など全く存在しない。
セリフについても、本当に中学生らしい発想からくる会話だ。
大人まがいのセリフもない。
そんな環境の中で、ゆっくりと進む衝撃的な内容は
現実にありえる「人の怖さ」「人の奥底の闇」を見事に表現している。
きっと「人の怖さ」から伝わる気持ち悪さと胸が締め付けれる
苛立ちが、本サイトの評価を下げているはずだ。
しかもロトスコープによる表現だから観ている人はたまらない。
途中断念してもおかしくはない。
普通アニメは非現実的なありえない話ばかりであるが
これが痛快なのだから・・。
本作品は、怖いのだ。現実にありえる話なのだ。
体操着を盗んでしまう。魔がさしてしまった?なのかわからんが
そこから脅迫まがいにされてしまう怖さ。
そして、人の出会いによって人生を変えられ堕ちていく人の弱さや恐怖を体感してしまう。
何かのきっかけで堕ちてしまう怖さは他人事ではない。
クラスのマドンナ的な可愛い佐伯さんでさえ堕ちていく。
笑顔を振りまく可愛いい店員さん。いつも綺麗なOLさんも
心の奥底に異常な欲望や闇が存在しているか知れないと日常を疑ってしまうほどだ。
この作品には感動は存在しない。
心の奥にしまいこんだ欲望と、人生を転がり堕ちていく怖さしか
ない。しかも這い上がれないから救いようのない話だ。
観ている者の心に深い傷だけを残す、現実に存在する問題作だ。
最後に、ラストは色々とありそうだが、余りにも片手間で
片付けられてしまったのが残念である。
漫画を知らない私には不完全燃焼で終わった。
本作の監督の表現した、現実にある人の怖さ を体感した。
監督にしてやられた感じだ。
見事です。