STONE さんの感想・評価
3.6
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 4.5
音楽 : 3.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
夢を追うということ
原作は未読。
リアルタイム放映時には改変問題で随分と叩かれていたのが印象的。
このことの詳細は触れないが、原作とアニメの媒体の違いや尺の問題などによる改変は
ともかく、必要以上の改変はしない方が無難なんじゃないかと思った。
基本的にはこういう夢を追いかけるような青春ものは結構好きで、追いかけるという部分での
勢いはよく出ていたように思う。
映像的にも走るシーンが多く、「追いかける」というキャラ達の意思をより印象付けている
ような効果があったみたい。
さくら荘での日々も楽しそうで、皆で馬鹿なことをやっている描写などは見ていて懐かしくも
あった。こういうことができるのが若い頃の特権だよなあ。
一つ屋根の下で暮らしていると楽しいことだけではなく、辛いことや悲しいこともあるわけ
だが、笑う、泣く、怒るなどのキャラ達の喜怒哀楽もよく表されていたなと思う。
あとコメディ部分に関して、せわしない感じもあったが、テンポ良くて結構好きでした。
ただ局所的にはいい話が結構あったが、全体としてはどうも腑に落ちないことが多かった。
序盤において主人公である神田 空太の去就を軸に、さくら荘を出る出ないという選択が、
夢を諦めない諦めるという選択に同一化されていくのがどうも解せない。
で、主要キャラが全てさくら荘の住人になってしまうため、結果として(大人を除く)主要
キャラが全て夢を追う者になってしまった。
そのためどうしても夢を追う者視点ばかりになってしまった感じで、夢を追う者が偉い、
正しいみたいな印象を受ける。別に夢を持たない者を貶めるような描写はなかったけど。
高校生ぐらいだとまだ自分の進むべき道が見えてない人はいくらでもいるだろうしで、
対比的な意味でも、自分の道を模索中のキャラがいても良かったように思える。
更にこの夢というのがゲームクリエイター、漫画家、声優、アニメーター、脚本家、プ
ログラマーとポップカルチャー系に見事に集約されているのは笑ってしまった。
文化祭の出し物などに代表されるように話の展開は作りやすいのだろうが、夢が「一般の
人には就きがたい職業になる」というのばかりで、なんか夢というものの捉え方の視野が狭いと
いうか。
で一番引っ掛かったのは「高校生にはこの展開は重たすぎるんじゃないか?」ということ。
ここが人生の正念場といった空気が強く、観ている側からすると、別に進学後でも充分
だろうという話が多かった。
原作のラノベの主要ターゲット層が中高生だったり、キャラの男女の距離感などから設定を
高校生にしたのだろうが、前述の部分を考慮すると、次のステップが社会人である大学の
メディア系の学科や、それ系の専門学校を舞台にした方が良かったんじゃないかと思う。
キャラに関して。
空太はよく切れるし、他への八つ当たりも多いなど、主人公にしては不快な要素を多く持って
いる感じ。ただ逆に言えば、まだ自分をコントロールできない10代の不安定な感情がよく
表されていたとも言えそう。
この空太のゲームクリエイターへの道だが、何故企画持ち込みばかりで、地道な道は考慮
しないのだろう。
私事で恐縮だが、自分もゲーム業界志望の知人が何人かいた。で中にはデザインも
プログラムもできないし、覚えるのが面倒だから企画志望という横着な者もいた。なんか
こういう連中にだぶって見えるんだよなあ。
一方、メインヒロインである椎名 ましろは序盤においてはいかにも天然系という感じで登場
してきたが、徐々に狙ってやっているようなあざとさも感じられ、キャラの性格がぶれている
感じ。実際、狙ってやっているとするとかなり印象が変わる。
このましろを始め、青山 七海、上井草 美咲のヒロインズは、いずれもいわゆる世渡り的な
部分は凄く不器用だが、その分健気さが印象強く、その辺が魅力なのかなという感じ。ただ、
実際に身近にいたら、いずれも面倒な感じではあるが(笑)。