千秋録 さんの感想・評価
2.4
物語 : 1.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 2.0
状態:観終わった
拡げすぎて纏まりのない設定
評判が高いので期待して観た。しかし、量子論もどきの設定が目に付き、鼻に付く。
フィクションの科学もどきに突っ込みを入れると切りがなく、楽しめなくなるのは百も承知だが、それにしても度が過ぎたレベルのデタラメである。
例えば、アインシュタインの「神はサイコロを振らない」という言葉の解釈も、本当の意味と全く違う虚偽の説明だ。
必要な設定であれば、ブラックボックスや架空理論で処理すれば破綻がないものを、虚偽を連ねて描写しているのが痛過ぎる。スタッフロールにSF考証担当の名も見えるが、彼らも含めておそらく物理学の初歩の初歩も理解していないスタッフだけで作った作品なのであろう。
また、本作品では3種類の平行世界が出てきており、相互の関係や登場人物の対応も大きな意味がある…筈であった。
ところが、ヒロインの能力とヒロインの父親の研究成果との関係、ラクリマ時空界の龍騎兵たちが戦士となった理由や契機、シャングリラ時空のノエインがその能力を身につけた経緯…など、全く説明がない。また、ラクリマ時空とシャングリラ時空のヒロインの能力や運命も、メインの時空のヒロインの能力とは全く関係がない描かれ方をしている。
いくらなんでもありの多元平行世界を仮定しているにしても、お粗末過ぎるご都合主義の羅列である。キャッチコピーの「僕の大切な人を奪いにきたのは、僕だった」というフレーズに光るものがあるだけに、無駄に量子論もどきでSF感を盛り上げようとしたのが残念である。そのようなことは省いて平行世界の間の相互関係を丁寧にフォローした方が、作品として格段に完成度が上がっていた筈である。
もう一度書く。「僕の大切な人を奪いにきたのは、僕だった」というテーマには惹かれるだけの魅力がある。そこを中心に各平行世界の関連を丁寧に描く作品であったなら、確かに名作となりえたかもしれない。