青陽 さんの感想・評価
4.8
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
この作品の良さは筆舌に尽くし難い
初めて観たのがNHKで放送されてたときだったのですが
あれ再放送だったとは!実際の制作は2005年
およそ10年近く前に作られた、そんな時の流れを感じさせない名作。
子育て飴や雪女など古くから伝わる民話のように
奇しく、切なく、人々の心をつかむ作品です。
音楽・BGM
この作品、音へのこだわりがすごいです。物語だと3話が聴覚に障りをもたらす蟲の話なだけあって特に印象的でした。途方もない蟲たちの鳴声に、音が無くなるときの演出。マグマの音。この回を観て、自分の耳を塞がなかった人は居ないはず!
その他にも自然の音が。風の音、水の音、波の音、船をこぐ音、鳥の鳴き声……あまりにも自然すぎて、注意しないとその素晴らしき音響の仕事ぶりを聞き逃してしまうところでした。
テーマソング
自分なら和風なOPにしてしまいそうだけど、ここのスタッフは一味違う。まさか洋楽を持ってくるとは!そして、それが蟲師にすばらしく合っていて。
アコースティックギターと優しい歌声、その素朴さが蟲師の世界観を表現してます。歌詞も合っていますね。だれかをもとめて遥かな旅路を往く。定住できない体質・目的のない旅とはいえ、本当にギンコが求めているものは何かないのか。人々を蟲の影響から救うこと、探幽に話を聞かせるため、自分の記憶を取り戻したいのか、それともただ生きているのか、原作だと明らかになっているのでしょうか?2巻までは読んだんですが、増税前に大人買いしとけばよかったな…
EDは毎回違いますが、淡々とした背景(しかし美しい!)にただ流れるスタッフテロップ、静かな曲々。話の余韻に浸れるというか、EDも物語の延長線上にあって……毎回EDの入りでこみ上げてくるものがあります。
よく流れる曲だと『理』と『深淵』が好きです。蟲の鳴声を音楽にしたらこんな感じになるのではないか、という不思議な魅力のあるメロディです。
特に好きな回と印象的な台詞
なんとか厳選した結果、8話に絞込めた。そもそも全話好きですから。
3話 柔らかい角 俺、忘れない。ずっと聞いてたんだ。母さんと同じ音。ぞっとするくらいきれいな音。
音の面からも物語の面からも非常に完成度が高くて楽しめた。下手したらこの話だけでも他のアニメ1クール分以上の満足感を得られるかも。女性作者だからか、少年がとても可愛らしくえがかれています。雪の降る音、雪が周りの音を吸っても消えない音、自分の体の音、生きている音……この回と23話はアニメになり音がついたことでより物語に深く入り込むことができます。
6話 露を吸う群 向こうなら生きていけるの…。この回は26話中でも特に切ない…。そしてBGMが屈指の名曲。本当にサントラが欲しい
島民を騙す片棒を担がされていたのも、自分が正直に話した結果として父親が死んでしまったのも純粋な少女では耐えきれない経験だったろう……。なにもかもが鮮やかで刺激的で、けれどとても穏やかで。そんな時間を過ごせるとしたら、過ごしてしまったら、はたして元の生き方に戻れるだろうか。蟲師は自分ならどうだろうかと思わず考えてしまう話が多い。
7話 雨がくる虹がたつ 俺の見たこの世で一番美しいものの名をつけてやりたかった… この話1番好きかも。男の浪漫があるよね。海に潜り続けるクリのおっさんを彷彿とさせる。もっと賢い生き方も、それなりの生き方も選べたけど、探さずにはいられなかった。後日談が伝聞で終わるのもまた良いです。ただありのままで、あるがままを受け入れて。ギンコの考え方、蟲師のテーマがよく表れていた話だと思います。
15話 春と嘯く ギンコの馬鹿ッ…あたし、どうしたらいいの…。すずが、すずが…すずが可愛い!蟲師であまりこういう感想を書くのも憚られるけど、でも可愛いんです!イイ娘なんですよ。夜分遅くに訪ねてきた見た目怪しい男を泊めてあげるんです。
ギンコの身を案じて腕にしがみつくとことか、奥ゆかしさがありますよね。きっと夏祭りに一緒に行ったら、人混みではぐれないように服の裾をきゅっと掴んでくるんですよ!手を握るんじゃなくて!裾を!!おれは何言ってるんだろう。
ギンコも離れがたくなった、それは冬の寂しさだけが原因ではないでしょう
17話 虚繭取り ひええええええ!!
おばあちゃんがぎっくり腰になってないか心配です。あれは心臓が止まるほどびっくりしただろうなあ。
本質は5話と似ていると感じました。いくら人事を尽くしてもどうしようもないことはあって、けれどけっきょく勝手に助かったりもして。
他の作品の主人公ならやってみなきゃわかんねえと虚穴の中をがむしゃらに探して奇跡的に見つけたりしそうですが
ギンコは責任を感じている絢を慰め、現実を理解させ、自分の時間を大切に生きるように諭します。こういうところがギンコの大人の、というか人としての魅力だと思いますね。主要キャラが少ないぶん、主人公が本当に魅力ある作品、それが蟲師なのです。
19話 天辺の糸 あんたが1番今の ふきを受け入れられなかったんだな
蟲師随一のロマンティックラブストーリー。BADENDの流れかと思ったけどハッピーエンドでよかった、本当によかった……。星とふき(あと蟲も)、見えずとも同じようにその場所に存在すると気づいてからの坊ちゃんは漢だった!彼のふきを想う気持ち、そこから生じた行動には泣かされました。ギンコも安心したような面持ちで見ていましたね。
○○は俺の嫁!とか気安く言う人には
彼のような強い覚悟を見習って欲しいです。
20話 筆の海 それでも、生きてるんだよ
地上波放送では最終回だったらしいですが、たしかに締めくくりとして素晴らしい話だったと思います。全ての命を滅ぼさんとする……蟲の中にもDQの大魔王みたいなやつがいたんですね。けど、悪意はないのだろうし
その蟲もただそういう存在としてあるだけなんでしょうか。生命の根幹に近いものが全生命を終わらせようとした。そんな蟲が現れたということは世界にとってそれが必要だったのか……わからない。ただわかるのは淡幽が魅力的であるということだけ。あっ、勿論たまもね。ギンコと淡幽の関係も素敵ですが、淡幽とたまの関係もいいですよねえ。「たまもいろいろと辛い思いをしてきたのだろう?うらんだこともあったろう?」「そのようなものはお嬢様に出会えたことで全て吹き飛びました」ここの会話がすごく好きです。淡幽が生まれながらに辛い宿命を背負いながらも、その宿命にまっすぐ向き合い、人を思いやる気持ちを持った子に育ったのはたまが居てこそでしょう。
また、最後の二人の会話。ギンコのセリフはフラグというわけじゃなかったんでしょうが、このあとの2話にわたり彼は今までの中でも結構ヤバめな命の危機にさらされます。
25話 眼福眼禍 先が見えないのが楽しいんだ。
過ぎたるは及ばざるが如し。
こんな風に
ストーリー単体で見ても良いのですが、蟲師は
アニメ化にあたってのストーリーの並び替え、構成が良いですね。
1〜3話で世界観の説明
蟲や光酒、光脈筋など重要な用語が説明されつつ、蟲師の仕事がどのようなものか理解できるようになっています。
そうしてギンコが順調に蟲の障りから人々を救ってきたところで、4話の枕小路ですよ。完全な対処法は無く、症状を和らげることしかできない。しかし、それも上手くいかず結局は全26話の中でも最鬱といえる結末を迎えます…。一応蟲を退治する術は解明されましたが、この先ギンコがこの方法を用いることは決してないでしょう。
この話で改めて蟲の特異性、彼らが途方もない存在だということを認識しました。ギンコは頼りになる良い蟲師のようだけど、それでも対処できないものもある。必ず救われるわけではないことがわかり、この先の物語でも
一体結末はどうなるのだろうか、という緊張感が生まれます。
5話 1話と被る部分あり。人でないモノになりかかっている少女。まだ人間であることに未練がある様子の彼女を助けようとして…
ギンコはれんずばあちゃんのこと気にしていたんですね。一度は助からないと思われたが、沼が寿命を迎えたことで分離され人間としての生を再び歩む決意をした。4話に続いてBADENDになるかとヒヤヒヤしたところですが救いがあってよかった。
しかし、6話。 5話では沼と死に別れ、少女が自分の力で生きていく決意をした救済エンドだったぶん、この話の結末は対照的で切なさが倍増します。
7話 夢ありロマンありの物語。6話が切なかったぶん、ハッピーエンドで救われる!7話にこの話を持ってくるあたりも粋ですよね。
切ない話、報われない話が多いぶん、ハッピーエンドの話がとても小気味よくほかの作品以上にああよかったと感じられる。だから私は7、17、19、23話あたり好きなんでしょう。
こんな感じで全編を通した構成も素晴らしい作品に仕上がっているのが蟲師です。今まで見てきたアニメの中でも間違いなくbest5に入る名作です。
以下、ほんと只のメモ
一方的に蟲に憑かれる話が多い中で異質だったもの
人が蟲を利用している話
6露を吸う群
9重い実
17虚繭取り
蟲と共存している話
15、22 持ちつ持たれつ。人と蟲、互いがそれぞれ利益を得ている。
18 知らずのうちに生の一部で蟲の恩恵を受けている。
主人公、ギンコの魅力
博識
頼りになる
冷静沈着
論理的な思考ができる
抜群の洞察力と記憶力
客観的にものごとを捉えて正論をはっきり言えるし、相手の気持ちを汲んだ人情味溢れる振る舞いもする。
蟲でも人でもできる限り生命を尊重しようとしている。
誰にでも気さくに話しかけ、怪しげな職と風貌にも関わらずわりと打ち解けている。
ギンコの過去に触れる話
12 もろ過去話。ヨキとしての人生もけっこう辛いことが多そうだった。記憶を無くした後、異形のギンコをしばらく預かっていてくれたおっさんはめちゃいい人。
25 幻の蟲、眼福がもたらした千里眼でもギンコの過去はわからず。蟲に優劣があるかは不明だが、常闇はすごい影響力を持つ蟲だったのだろうか。それとも本人の記憶から読み取るため、過去を失った状態のギンコからは何も見ることができなかったのか。
26 12話で村を出たギンコのその後が伺える。