見習い道化師 さんの感想・評価

5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態：観終わった

見る会話談・魅る怪異譚

原作はずっと前から読んでたけど、アニメはようやく最近見れた・・・。


ひとつの作品として完成されている化物語。
しかし、実はこの作品、楽しむ点が真っ二つに割れちゃっているんですよね。

まあタイトルの通りなんですが、ひとつが「視覚と聴覚で楽しませる会話劇」、そしてもうひとつが「青春怪異譚」です。


まずひとつめの「視覚と聴覚で楽しませる会話劇」。
漫才とは見る側に「見る気」があってはじめて笑える。ただの面白い話ってだけじゃあ、関心は引けません。
化物語ではその関心を、独特な視覚表現で集めています。そのうえで声優の華のある演技で聞かせているのです。

これは会話に限ったことではなく、化物語全体でも言えることですね。
わざと現実味のないデザインで画面を埋めることで、視聴者の意識関心を絶えず集中させ続けられている。
シャフトといえど、他作品ではここまで極端な演出はしていません。
シャフトの演出というよりは、化物語独自の演出です。


そしてふたつめの「青春怪異譚」。
原作者の西尾維新先生は、非常に「人の弱さ」を描くのが上手な作家さんです。
そして化物語でも、各登場人物が持つそれぞれの「弱さ」が原因で、怪異に遭ってしまいます。

忍野メメの名言のひとつに、「君が勝手に一人で助かるだけだよ」とありますが、これは結局人は自分の足で立たなければならない、ということで、そこから怪異と登場人物の弱さが密接に関係していることが分かります。
そして怪異と、自分と向き合う勇気を持つまでのドラマが、まさに青春怪異譚なのでしょう。


・・・と、ふたつほど挙げてみましたが、どうですか？
ぶっちゃけ、関係ないように思えるでしょう？

実際、原作でも会話劇と物語、どちらを重視するかによって印象や感想がガラッと変わっちゃうんですよね。


じゃあ、どうしてここまで上手くかみ合っているのか・・・
そここそが、シャフトがこの作品に貢献している一番の点です。

何より凄いのがキャラクターの造形。
会話劇でのおかしなキャラと、怪異譚上でのシリアスなキャラ、両方で違和感のないキャラクターを作れています。

そして、そのシャフトが求めているキャラの雰囲気を忠実に実現している声優陣も素晴らしいです。

文章では表現できない所を逆手に取り、二つの要素を密接なものとしたシャフトの手柄は相当なものだと思います。


最高の素材である原作、それを上手く料理したシャフト、そしてそれに命を吹き込んだキャスト陣。
全ての要素が奇跡的に噛み合ったからこそ、化物語という傑作が生まれたのでしょうね。