ルカワ さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
現代社会の可能性
舞台は、人間のあらゆる心理状態や性格傾向の計測を可能としたシビュラシステムが導入された西暦2112年の日本。人々はこの値を通称PSYCHO-PASSと呼び習わし、有害なストレスから解放された理想的な人生を送るため、その数値を指標として生きていた。
その中でも、犯罪に関しての数値は犯罪係数として計測されており、たとえ罪を犯していない者でも、規定値を超えれば潜在犯として裁かれていた。
そのような監視社会においても発生する犯罪を抑圧するため、厚生省管轄の警察組織公安局の刑事は、シビュラシステムと有機的に接続されている特殊拳銃ドミネーターを用いて、治安維持活動を行なっていた。
そんな中新人監視官として主人公常森朱は公安局刑事課一係に配属され犯罪を理解し予測する事ができるが故に高い犯罪係数を持つ執行官たちや同僚の宜野座伸元とともに犯罪を取り締まっていく・・・というストーリーです。
シビュラシステムによって将来の可能性が決められた世界、犯罪の考え方も変わり社会における一個人の在り方も変わってきています。
スタッフ陣が豪華だったため期待していましたが素晴らしい出来でした。
最初に朱の周りに起こっていく事件。それらが段々とやがて一つの点に収束してゆき、それが槙島聖護という一人免罪符体質(つまり犯罪係数が上昇することのない体質)の男に依るものであったと分かる。やはり事件の全容が明かされ、全ての黒幕との対峙というのは燃えますね。
私としてはこの作品は現代の科学社会におけるアンチテーゼと考えております。急速に発展してゆく技術に、果たしてそれを扱う人間の方はついていけているのでしょうか?
この世界では、あるいは私たちの住む現実世界でもそうかもしれませんが、人々は自分たちの扱う技術についてどれほどの理解を持っているのでしょうか?あくまでも自分たちの生活水準を格段に上昇させてくれる、云わば神器を利として還元されているから素晴らしいと勘違いしているようにも思います。勿論純粋に技術そのものは素晴らしいですが、メリットだけでなくそのものが持つデメリットの側面に目を向けることをしないで楽な思考に身を委ねてしまっています。
シビュラシステムはただのフィクションではなく、私たちが、この社会が持ち得る一つの可能性だと考えるべきだと思います。
個人的にはこの作品のテーマは時代における正義の在り方と、それを決める人間の、作り出した世界に対していかに能動的であるべきかだと思っています(多分これはごくマイノリティな思考でしょうが(笑))。
物語の最後で主人公朱は、シビュラシステムの全容を知って尚もそれを受け止めて生きていくことを選びました。それを知った上で勿論考え方や行動は変化したと思いますが大局的観点からは今まで通りだったと思います。
それによりこの技術社会におけるテーゼをこの作品は考える余白を残したと思っています。朱はこう選択した。ではあなたたちは?
私にとっては色々と深く考える機会を得る事の出来た素晴らしい作品でした。