三崎鳴 さんの感想・評価
3.9
物語 : 5.0
作画 : 2.0
声優 : 3.0
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
アンチハーレム物の愛憎サスペンス
オーバーフロー制作アダルトゲーム「School Days」を原作としたアニメーション作品。
凄惨かつ衝撃的な最終回が話題を呼んだ問題作。テーマは男女間の三角関係を重点においたもの。作品自体の評価として、観る人によっては最低の駄作にも完成された傑作にもとれる評価が真っ二つに分かれるであろう作品だが、個人的には傑作として評価したい。恋愛物の作品史上でも屈指の駄目人間と呼ばれる主人公伊藤誠という人物について,又,それを取り巻く環境について。誠という人間は結局の所,他の女性の気持ちというものを省みることなく、肉体関係だけの表面上の付き合いでごまかし続けた。現代を生きる若者達は昔の恋愛文学小説のように深くからの愛情を知っているだろうか、最近ではニュースでも不倫騒動や芸能人の結婚などが大々的に報道されるようになり、恋愛関係の意味合い,あるいは重さ,といったものは本来あるべき域に達していないのではないだろうか。この作品にはそんなアンチテーゼが込められている様な気がした。この作品において完全に悪と断じるべきは人間関係を清算仕切れなかった誠という人間なのだろうが一概に彼だけが悪いとはいえない。最終話,最後のナレーションでも分かるとおり、彼もかつては純粋に桂言葉という人物に一人の女性としての好意を抱いていた。そこに西園寺世界という人物が関わることによってこの関係図は複雑化し、彼の判断を鈍らせた。西園寺の行動自体に悪意は無かったように見えるがこれが一連の物語の全ての発端だ。言葉を心理的に追い詰めたのは周りの環境を取り巻く人間達が原因だが、根本的には西園寺に原因がある。但しそれは因果的なものであり直接的な危害とはならない,のに対して誠は彼女達の中の感情を知ることも無く自己満足だけのために女性との接点を持つ最低の人間として描かれた。近代の若者たちが流石にここまで人格破綻した人間ばかりとは思いたくないが女性との付き合い方が軽視されてきている時代ではある。一度、他人との関係の重さについて再認識してみてはいかがだろうか。
原作では多岐に渡るエンディングの分岐が存在するのでアニメ版で興味を惹かれればプレイしてみて損は無いかもしれない。この作品を見て苛立たない人はいるのかな・・・