plm さんの感想・評価
2.8
物語 : 2.5
作画 : 3.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 1.5
状態:観終わった
ゴールデンタイムというよりブラックヒストリー
原作者さんが「とらドラ!」の人と聞いて、恋愛ものを期待して観始めた本作。
"記憶"に関して問題を抱える主人公に、周囲の人物とのキャンパスライフを描く物語。
「とらドラ!」との大きな違いは、物語の舞台が大学になっていることだろう。
「ゴールデンタイム」というタイトルは、テレビで視聴者の多い時間帯 18時~22時のことと、
大学生が18~22歳の頃であることをかけて"人生において輝かしい時期"といった意味だと思われる。
☆・゚:*では輝かしい時期とはなんだろうか?
恋をすることだろうか? 自分探しをすることだろうか? 何かに打ち込むことだろうか?
この作品における輝かしい時期とは何を指すものなのか。何を描こうとしていたのか。
自分としては、それは"若さ"じゃないかと思った。
この"若さ"には、活気に溢れるといった良い面だけでなく、向こう見ずで愚かという悪い面も含まれる。
自分のやりたいこともおぼろげな登場人物たちが、その場の勢いにまかせて
浮ついた言行を繰り返しては、居場所を求めて他人と馴れ合う。
主人公含め自分本位に振る舞う人物ばかりで、本心では認め合えない。
たしかに、大学生の距離感ってそういうものなのかもしれない。そういう意味ではリアル。
でもそのリアルな距離感を描いたとして、創作物として面白いのか?という問題。
■この作品は果たして誰得なのか?
実のところ、この作品恋愛ものですらない。
なぜなら恋愛ものとするには大きく邪魔してくる要素があるから。"記憶"のことである。
現実的にはありえないファンタジーな要素が絡んでくるとしても、見せ方次第でそれは良い。
けれどこの作品の場合、感情自体が記憶によって左右されているために正常な思考ができていない。
主人公が抱える葛藤をどうすることもできないし、特殊な境遇すぎて共感することもできない。
つまるところ恋愛の感情的な部分が喚起されない。どちらかといえば記憶(自分)との戦いだった。
ヒロインの方も、どこかおかしな子として描かれており、その行動は突拍子なく思考は読めない。
思考の理解できないキャラが二人並んだところで、恋愛ものとして成立するかといわれたら無理だろう。
そもそも"記憶"の問題が物語の趣旨になっており、恋自体は成就してしまっているともいえる。
恋愛ではもう語ることがないからといわんばかりに、都合良く"記憶"問題を持ち出してくる。
もはや話を盛り上げるための便利ツールかといった具合で、それに振り回されるキャラクター。
上っ面だけみればこれ、浮気性な男と未練がましい女のどろどろした関係に見えなくもない。
精神不安定な方々の共依存関係をみたとして、わー楽しいと笑って楽しめるだろうか?
だが、恋愛ものとして無理である以上、もはやギャグとして笑って観る道しか残っていない。
■ひょっとしてギャグでやってるのか!?
そもそもこの作品、こんなやけに重い病気を主眼に置いているのに反して、ギャグ作風も強いのだ。
シリアス要素が感情移入できず、その切り替えも上手くいかないので、
シリアスも含めてギャグとして、次はなにやらかしてくれるんだ?という方向で観るようになった。
やたら頭おかしい感じなので、関わりたくないけど他人として観る感覚なら面白いのかもしれない。
奇跡の「とらドラ!」だったんだなと思った。演出や構成の仕方によって変わったのだろうか。
あちらは胸が苦しくなるほどの感情の機微を感じられたのに。
*まとめ*
ゴールデンタイムに足りなかったのは"良い意味での若さ"じゃないかと思います。
これでは輝かしい黄金の時間、というよりも黄色い救急車って感じでした。