「耳をすませば(アニメ映画)」

総合得点
87.6
感想・評価
1449
棚に入れた
9850
ランキング
146
★★★★☆ 4.0 (1449)
物語
4.1
作画
4.0
声優
3.7
音楽
4.1
キャラ
3.9

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ネタバレ

遥か彼方 さんの感想・評価

★★★★★ 4.7
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 5.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

思わず泣くと言う事が本当に「泣く」って事なのかな、と感じた。

皆さんはこの作品どこで泣きましたか?
この作品泣けましたか?

友人とリアルタイムで映画館。

少女漫画原作が宮崎アニメになったらここまで違うものになるんだとスタートしてから楽しみながらも驚愕しっぱなしでそのシーンがやってきた。
主人公雫が今までで一番一生懸命に全力で書いた「猫の恩返し」を聖司の祖父西司朗に読んで貰うシーン。

私はてっきり司朗に褒められるものだと思っていた。
その頃私はただ皆が言っていると言う理由だけで、それがまるで世間のルールであるかの様に「努力は報われるものであるべきだ」と思い込んでいたから。

だが司朗は決して褒めたりしなかった。
不自然な点を次々と言いほぼ酷評に近い程容赦無く批評していった。

(あんなに頑張ったのに!?どうして・・・)
雫の努力が報われない展開にショックを受けていた直後
「ですが」
と一言だけ司朗は雫を励ました。
途端に雫は
「辛かったんです、書いても何だか書きたい事が上手く書けなくて・・・」
と号泣し始めた。

その瞬間
(あれ・・・あれ、れ・・・)
本当に突然それまでそんな予兆すら全く無かったのに、目尻が一気に熱くなり鼻の奥がツンと激しく痛んだ。
恥ずかしいとか、ここがどこかとか、誰かがそうだからとか
そんな事は全く考える余裕が無かった。

雫と一緒に私も泣いていた。

人間本当に泣いてしまう時は堪えきれない。
だがそれが本来の人間の感情のあるべき姿だと感じる。
泣けるから前に進めるんだ、と。

でも大人になり絶対泣いてはいけない場面に出くわす事も多い事を知って、実際皆と同じ様に私も泣くのを何度も我慢して来た。

小さい頃はそんな事考えず頻繁に喜怒哀楽を素直に露わにしていただろうから、アニメを観て泣いた事など数え切れないかも知れない。
でも大人になるに連れて「泣いてはいけない」場面があると知り、また残念な事に「泣かなくてはいけないんじゃないか」と思う感情も持ち始めた。

アニメには直接関係無いが
ある歌詞で
「ああ、卒業式で泣かないと、冷たい人と言われそう」
と言うのがある。
例えば「これ感動する」「絶対泣ける」と聞いてもし泣けなかったら・・・
(泣かないと、泣けなかったら・・・)
私は非常に残念な事にアニメにすらこの一種のあざとさ的な感情をいつしか当てはめてしまっていた。

泣くと言う感情はそう言うものじゃない。
きっとこの作品のあのシーンで思わず我慢出来ずに涙が抑えきれなくなった、それが自然に泣くと言う事だと今なら思える。

勿論そのあざとさばかりを意識してアニメを観ている訳ではないが「感動モノ」「泣ける」そう言う意見を聞けばやはり心のどこかに焦りの様なものが沸き上がってくる事も多い。

私事だが映画を観た頃は私も雫と同じ様に真剣に物語りを書いていてその道を目指していた。
だからその感情移入も勿論有るだろう。
だが、それだけでは片付けられない本当に思わず心からこみ上げてくるものが有った。
それが私を素直にちゃんと泣かせてくれたのだと思う。

後にも先にも宮崎アニメで泣いたのはこの作品だけ(泣きそうになった事は有るが)
でも新作かつ監督最後の作品である「風立ちぬ」は確実に泣く。と言うのもユーミンの「ひこうき雲」を聴くだけで泣くからだ(その為作品自体は未視聴)

これは「感動する」「泣ける」と言う感想を知る前に既に泣いていたのでこの作品と同じ様に「素直に泣ける」感情を持てるのだと思う。

私は数年前から今まで泣ける事の大切さを学んだ経験をした。
大人になるに連れて素直に泣けなくなる事も多いだろう。
殆どの場合、それが現実。

だからこそ、夢を見せてくれて感情を揺さぶってくれるアニメを観た時くらい素直に、思わず泣きたいと感じる。
この作品のあのシーンで泣けた。
それは「泣く」と言う事の大切さを知る上で、一つのかけがえのない瞬間だった。

これからもアニメを観ていっぱい子供みたいに、素直に思わず泣けますように。

投稿 : 2013/11/18
閲覧 : 309
サンキュー:

26

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