missing31 さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
自己との対峙に最適な映画
この映画は、不条理と不幸に満ちている。
愛する二人が向かう先は絶望だけだ。
テレビアニメでは絶対に出来ない飾り気のない絵柄とキャラ。
実際の社会情勢を基盤としたフィクションだが、本当にリアルだ。
それ故に、主人公や登場人物の言動、行動、心理に矛盾が無い。
いわゆる「アニメっぽさ」とは無縁の世界の中で物語は静かに終焉に向かう。
この映画を観て、視聴者は夢を得る事が出来るか、否。
優しい気持ちや愛を得る事が出来るか、否。
心躍り、わくわくする体験が出来るか、否。
いわゆるアニメに期待されている感動など微塵も持ち合わせていない。
地味で暗い映画である事は間違いない。
しかし、逆説的に考えると
何不自由無い時代に産まれた自分の幸福を知り、
将来の選択の自由を与えられる幸福を知る事が出来る映画でもある。
今が幸せで、何不自由なく暮らしている人は観なくていいと思う。
幸福なはずなのに、何が幸福なのか分からない人にこそ観てほしい。
世界のどこかで、かつて(あるいは今も)起こっている出来事を通し
自分の立ち位置や思想、哲学を見つめ直す映画として。