missing31 さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 3.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
宮崎駿の想いを最もよく表している映画
この作品は「もうこれでジブリ潰れるかも」という時期に、
宮崎駿が「だったら好きに撮ろう」という事で作った作品。
結果的には、興行的な成功を収め、ジブリ再建のきっかけとなった。
風の谷のナウシカ(漫画版)に描かれているものを、2時間の映画に落とし込むと
もののけ姫が最も近いのかな、と感じさせる。
生きる為に残酷に、醜く、あざとく成らざる得ない人間と、
美しい自然が消えていく痛みと、それに対する義憤。
自分もまた、醜い人間である監督自身の二律背反的な心理が
そっくりそのまま落とし込まれているように感じる。
勧善懲悪の単純な話では描けないほどの深い世界観設定とストーリーが、
見事に調和して、メッセージを持って観る者達に迫ってくる。
宮崎駿は「入口は浅く、出口は高く」という事を心がけていると言っている。
「アニメは子供が観るもの」とも言っているが、このアニメを観た中学生の
自分は見事にエセ博愛主義者になってしまった。
このレビューを読む人は、自覚していると思うが
私たちは木を切り、火を使い、山を崩し、神を殺した「たたら場」側の人間だ。
それなのに、おそらく大多数がサンとアシタカ、山犬達を応援していたのでは?
シシガミの首が落とされ、森が死んだ際に胸が痛んだのでは無いだろうか。
その胸の痛みこそ、この映画からのメッセージである。
種としての人間が嫌いで、飽和世界が嫌いな宮崎監督が、
たたら場の人間達を楽しそうに、生き生きした存在として描いた理由。
その理由を個人的に分析し、風の谷のナウシカ(漫画版)から、ある台詞を引用する。
人類の滅びの運命を、システムによって回避しようとする全能者に対して、
ナウシカは、滅びるかどうかは、我々とこの星が決める事だ、と反論する。
全能者「お前は危険な闇だ。生命は光だ!!」
ナウシカ「ちがう、いのちは闇の中でまたたく光だ!」
この台詞こそ、醜くも美しく輝く、この世界に対する監督の「希望」そのものだ。