三崎鳴 さんの感想・評価
4.6
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
90年代アニメ業界を代表する傑作
庵野監督・GAINAX制作のオリジナルアニメーション作品。主題歌『残酷な天使のテーゼ』と共に今やこのアニメの名前を知らない人は少ないだろう。「70年代のヤマト,80年代のガンダム」と共に「90年代のエヴァ」としてアニメ業界を築き上げた作品。圧倒的な世界観,クオリティの高い音楽,インパクトのある映像,滑らかに動くアクションシーン,衒学的な脚本,等何処をとっても完成度の高さは窺える。脚本の点において「衒学的」と表現したのは庵野監督自身の言葉からだ。中身を要約すると「エヴァは哲学的な作品だとよく言われるが,これは雰囲気を盛り立てる為の演出であり考えて作り上げたものではない」と言った内容の発言をした。本作にはTVアニメ版の最終2話と後に映画版として制作された結末があり,ゲームで言えばマルチエンディングの様な形式となっている。TV版では24話まで広げてきた謎と伏線を丸々無視したとも言える結末が設置されていた。これも当時の話題を作り上げた要因の一つと言える。又、映画版では伏線を回収しながらも更に新たな謎を生むという仕掛けを披露した。確かにこの作品がアニメ業界史に残る作品であることは確かだが,主張の強さや独特すぎる雰囲気から,あまり他人に勧められる様な作風ではない。要するに個人的にはストライクゾーンだが,これを他人に見せて面白いと言わせられるかどうか,と言えば肯定は出来ない。そういった立ち位置の難しい作品ではあるが,内容をリメイクしつつも新たな境地に踏み込んだ「新劇場版」シリーズは未だに続いており,20年近く経っても未だに一定の興行収入を得ていることを見るとやはり濃く根強いファン層を抱えているんだな,と感心せざるを得ない。但し、この作品の楽しみ方というのは渦巻くカオス感や哲学的な雰囲気に酔いしれる感覚的なものである為、一つの作品としてみればオチの用意されていない冗長な物かもしれない。しっかりと構成された作品を求めている人には絶対に勧められない。第18回日本SF大賞・第1回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞・日本アカデミー賞等シリーズを通して数々の受賞暦を持つ。