いなみ さんの感想・評価
4.7
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
シャフト渾身の1作!
まずこの作品は是非DVDorBlu-ray で観て頂きたい。
そしてキャラクターコメンタリー(副音声)も合わせて観てもらいたい。
力の入れようが半端ではない事がはっきりとわかる。
なんと原作者書下ろしのコメンタリーを声優陣がそのキャラのままで演じているのだ。
声優が素の状態で作品の感想やエピソードを語るのとはわけが違う。
原作者・声優からしてみれば2作品分以上の労力である(しかもコメンタリーの方が台詞多いwww)。
この作品、本編だけみても本当に台詞の数が多く言い回しの難しい表現も多いのに。
しかし手抜き感はまったく感じられない、むしろ実はこの作品の登場人物は実際に存在するのではないかと錯覚してしまうほどのリアリティを感じる。
声優の方々と音響監督(鶴岡陽太)に拍手を送りたい。
もちろん本編でもその力の入れようが随所に見て取れる。
まず声優陣、大変豪華な面子だがその中でも神谷浩史さん&櫻井孝宏さんの演技…というか原作に対する理解度がすばらしい。
原作を先読みしている作品では声優の声と自分の中にあったイメージに最初は多少の違和感を覚えるものだ。
だがこの二人に関してはピタリとはまった。
これは「声」がはまったというよりも阿良々木 暦と忍野メメという人物の人柄がはまったといった感じが強い。
「あっ!この人たちは原作をちゃんと読んで世界観を理解して声をあててる」となんとなくわかって感動してしまった。
生意気な言い方をすると「いや~神谷さん、櫻井さん、わかってるねぇ」という感じだm(__)m まさにプロの仕事!
あと、斉藤千和さんの声と演技にも驚かされた。
良い意味で期待を裏切られた。
あんな演技ができるのか!見事に今までの斉藤さんのイメージを変えてくれた。
自分的には「最強のツンデレ娘」の誕生だった。 {netabare}真宵が「おめでとうございます。」 {/netabare}
と言った時おもわず「ありがとうございます。」と言いかけたほどだ。
「デレないツンデレ」
斉藤さんどうもありがとうwww
そして作画・演出だがこれは賛否両論あると思う。
個人的には新房ワールド全開といった感じでとても好きなのだが、中には途中に入ってくる赤や黒のカット、漢字などが気になってストーリーが追えないという方もいるだろう。
まぁそういう方にはこれが新房昭之なんだ!…というしかないんだが、それを除けば原作のアクの強さに負けない作画と演出だったと思う。
特に「モブキャラ・・・ゼロ、妙に単色が強調され異世界のような背景」これが今の暦が見えている世界なんだ!と主張する演出は、背筋に悪寒が走るほど衝撃だった。
この作品、台詞や場面のカットはあっても付け足し・変更はない。
つまり台詞は全て原作どおりなのだから演出にも制限が付く、しかもこの作品は基本会話劇である。
その中でいかにして人物を動かしアニメとして成立させるか、それを考えるとこの演出は素晴らしいと思う {netabare}(でもまさか螺旋階段から落ちてくるとは思わなかった…どんな学校だよwww) {/netabare}
。
あと、この作品(原作も含め)は面白い観方ができる。
{netabare}この作品を観た方は思わなかっただろうか…どう考えてもヒロインは「羽川翼じゃね?」と、原作を知っている人は時に。
最終的には羽川ENDでしょう?と。
しかし暦と付き合うのは戦場ヶ原ひたぎ。
しかも序盤で速攻!そしてなんだかひっくり返りそうにない展開。
同じ疑問を持っている人がいないかネットをさまよい歩いていると…この構図を面白い見方をしている人達がいた。
その人たちはあらゆるアニメ・漫画・ラノベのヒロインに順位付けをしていて、この化物語を含む物語シリーズにも同じように順位をつけていた。
第一ヒロインは羽川翼、そして第二ヒロインが戦場ヶ原ひたぎ。
そして第二ヒロインが主人公と付き合うという構図。
これこそ西尾維新先生が狙っていたことではなかろうかと。
メタファーな視点になるが、ひたぎは翼が第一ヒロインだという事、自分は第一ヒロインにはなれないという事を理解していた。
でも阿良々木 暦をどうしてもあきらめられない。
だから結果を急いだ。
二人が付き合っていない今ならなんとかなるかもしれない。
そして運良く暦と付き合うことができた…が自分は第二ヒロイン、そして相手は絶対的ヒロインである羽川翼。
だから必死に暦を繋ぎ止めようとする結果が作中の行動だった…と。
これもメタ視点だが、翼は自分を絶対的ヒロインだと、何があろうと最終的に阿良々木 暦と結ばれるのは自分だと思っていた。にもかかわらず上手くいかない(あれっ?この物語のヒロイン私じゃないの?)。
だから膨大な量のストレスを抱えてしまい、「つばさキャット」の話につながるのだと(そういう視点で最終話のコメンタリーを聴くと大爆笑してしまう)。
ひたぎの必死さを象徴するかのように「つばさキャット」の第二話に翼は登場せず、ひたぎが暦をデートに連れ出す話でしかもOPは戦場ヶ原ひたぎが歌う、まぁTV版最終回の演出なのかも知れないが・・・。
そして満天の星の元「これで全部よ、阿良々木君にあげられるもの」と。
「あげられるもの」の内容は感動のシーンなので観てのお楽しみだが、これが本当に自分は第一ヒロインにはなれないという事を理解してのことだとすると、余計になんて健気な娘だろうと思ってしまう。
しかしまだ完全に羽川フラグが折れたわけではない。
なにせ羽川翼は「委員長の中の委員長」「ヒロインの中のヒロイン」ここまで暦に尽くしてきた羽川翼がこのまま副音声クィーンで終わっていいはずがない。いや終わるはずがない(誰かが羽川パーフェクトワールドと呼んでたっけwww)。
次作「偽物語」の複線になるが、本物と変わらない偽物の価値ははたして…「本物であろうとする意思が、本物より本物になるのか。」 {/netabare}
こんな視点で観ると2回目以降も新しい発見があるかも?