じぇりー さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
稚拙なタイトルで失礼: 「近年で一番泣いた!」
音楽が好きな人になら…さらに音楽を演奏する人になら、確実に伝わるであろう、この作品の放つ「高揚感」と言ったらない。
独演ではなく、ひとたびセッションとなると、言葉が無くても、互いの奏でる「音」で会話をすることができる…確かにそうだ。
無口・無表情で、孤独さ故にどこか冷めた心の持ち主であった主人公が、徐々に感情を露わにし、時に暴発させるまでになったのは、初めて心を許せる友人に出会えたからか、恋をしたからか?
私は、「ジャズ」という音楽に出会ったことで、彼の中で抑圧されていた様々な感情が表に出たからだと、思いたい。
それ程に、「音楽」の心に与える影響は計り知れない。
あまりアニメを見て泣くことのない私が、既に序盤で落涙し始め、ラスト辺りになると涙で前が見えないほどになってしまったのは、この作品の素晴らしさも当然あるが、あまりに自分と重なる要素が多かったことにあると思う。
クラシック畑で育ってきた者が新しい「音楽」に出会うときの衝撃。そして、基礎があるはずなのに、上手く奏でることができない悔しさ。
学校までの長い坂。カトリック教会。失恋。
そして…毛糸。
EDテーマの秦基博の歌う「アルタイル」(この曲大好きなのです)、この曲のサビの途中で現れる青い一本の線…そしてその後まるで水中を漂うように画面に浮かんでくる、一玉の「毛糸」。
そしてサビの終盤で、振り返った主人公がその青い毛糸の上を駆ける描写…作中でこの毛糸に絡んだエピソードを見た後は、このEDだけで毎回落涙していた(バカ
編むことは、奏でることと良く似ていると思う。
一つ一つ心を込めて丁寧に紡ぐと、音楽もニットも、作り手にしか出せない風合いを帯びたものが出来上がる。
さしもの編み物片手に毎回アニメを見ている私も、何度も手を止めさせられてしまった作品。
本当は、演奏描写の素晴らしさだとか、各話のタイトルとなっているジャズナンバーと作品とのリンクだとか、中盤の即興メドレーのシーンのことだとか、長崎らしい古いステンドグラスの教会だとか、タイトルになぜギリシャ神話の「アポロン」が出てくるのかとか、ラストに描かれるそれぞれの登場人物のその後のことだとか…色々書きたいのだけれども、どうにも収まりがつかないレビューになりそうな予感がするので、この辺りにしておこうと思う。(他の方が既に書いてそうな予感もするし…)
「アルタイル」…カラオケのレパートリーなのだけれども、今後歌うときに泣かずに歌える自信が、もはやない。
あぁ、早くあのドラムとギターとパーカッションのあるカフェのステージで歌わせてもらいに行かなくては。セッション恋し。
泣きたくなったら、また見よう。