とすかねり さんの感想・評価
4.6
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
異質なミステーリーの世界へ
*ストーリー
正直展開が全く読めず、最後までもやっとしながらも進んでいった感じ。長期的な伏線と短期的な伏線の回転が巧く物語を進めていく、ミステリーという分類が適切か悩ましい位の作品だったと思う。
一般に、ミステリーと言うものは、一部は伏線的設定によって支えられるとしても、基本的には、ストーリーは事件準拠の完結で、ある事件の内容が次回以降に持ち越されることはあまり多くない。しかし、そういう視点で見ると、この作品は異質で、一つ一つの事件が、全体の物語の進行を牽引している感じがあり、個人的には、ファンタジーに分類したいという心持がする。
ただ、全24話という話数の中で激動の時代を表現したことで、いまいち説明不足感が否めず、トータルとしては良くても、じっくり考えると悩ましいものがある。
また、シリアスシーンからのギャグシーンへの転換が急激過ぎて、若干付いて行けない感もある。つまり、久城がヴィクトリカを心配するようなシーンから、急激にギャグシーンに振られると、久城の精神状態を疑うというか・・・
まぁそういう意味も込めて、☆4は妥当かと思う。
*作画
作画は個人的にはとても好きな感じで、ストーリーに対してミスマッチの無い作風だと思う。キャラ原案を『異国迷路のクロワーゼ』に代表される武田日向さんが担当しているが、全く近代西洋と東洋の混交という作品のコンセプトも近似しているし、何よりかわいい!(笑)原案への彼女のキャスティングは神がかっていたとしか言いようがない。
惜しむらくは、もう少し作画自体に目を引くようなものがあってもいいとは思う。作品の性格上、もう少し抽象的なシーンや隠喩的役割のある差し込みなどがあっても、作風は壊れなかった気がするが、そういうシーンはそこまで多くは無かった気がする。
☆4.5
*声優
実力派声優を多く起用する、キャスティングの良さは言うまでも無いが、何より、主演の悠木碧の演技の幅に感動する。同時期に『魔法少女まどか☆マギカ』でも主役の鹿目まどかを演じているが、そのキャラクターとヴィクトリカとのギャップを楽しむのもいいと思う。
同時期に複数のキャラを演じることはなかなかに難しいと思うが、更にそれが落差の大きいキャラだとなおさらである。
☆5安定
*音楽
テーマソングは素晴らしく、特に歌詞は作品の内容をよく読んで書いたと思う。作中のBGMも、作風を巧く表現しつつ、キャラの心情風景を象徴するものがあり、個人的にはサントラを早く買いたい(笑)
☆4.5
*キャラ
キャラそのものの性格や属性などは、意外と目新しいものは無いようにも思う。特に主人公のヴィクトリカは、ある種のテンプレに近い。「良家」「ロリ」「家族難」「愛への渇望」「ご主人様」「孤独」「ドジ」などの基礎属性は、ある種の基本で、言ってしまえば、『とらドラ!』の逢坂大河のそれに近い。
本作で注目すべきは、キャラ間の関係性の部分である。こうした作品であれば、安易にヴィクトリカと久城の間の恋愛話に持ち込むことも可能だったと思う。しかし、最後まで両者の関係は明らかにされないままである。そういう状態のままで、ヴィクトリカ・久城の両者の人間関係や人格的成長を描けている点は、すごいと驚嘆する。
☆5
*総括
序盤のミステリーから、後半の激動までの濁流のような作品に魅了された方は多いのではないかと思う。また、ヴィクトリカと久城の信頼が形成されていく過程もまた、非常に興味深い。
ミステリーとファンタジーの或いはアクションの溶け合うような不思議な作品だったと思う。