たんたんたぬき さんの感想・評価
3.6
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
MVP怜
今期はどんぐりの背比べだと思います。この作品自信を持って押せない。でも一つだけ言えるのは今の潮流は女性向けだと言う事です。だからこの作品はつまらないと言う話をするわけじゃないです。確かに男の私は十全には楽しめませんが、この作品男性が見ても楽しいのでその点勘違いしないで欲しいと書いておきたいです。だから私はこの作品を今期NO1とみなすのです。(原作未読です)
この作品はこれと言った特徴の無い作品です。文句なしに挙げる特徴は作画だと思います。ただ他に特徴がないので仕方なく上げるだけです。さてまずは目を見張るものが無いと書いてから敢えて言うならキャラです。京アニと言う会社は作画以外碌なものを作れません。それもそうです。原作物以外特に目立った作品を作ってないからです。それはすべて原作者の力です。では京アニはその間何をしてきたか?原作をアニメ化する間キャラを魅せる技術を磨いてきました。この会社キャラだけはプロとして見せるものがあります。
キャラのMVPは間違いなく怜だとして良いでしょう。ギャグ良し、シリアス良し、作品の中の立ち位置も良し。隙の無いパーフェクトでしかもどの部門も際立って目立っています。強いてこのキャラの欠点を言えば、多くの作品の中で見るとどこかで見たことのあるメガネ馬鹿です…。(緑間、MRプレアデス、ETC・・・)しかしこの欠点を見事シリアスによって補っています。最初は色物馬鹿キャラかと軽く見てました。その役目はきっちりこなしていました。しかし物語が進んでいくときちんとシリアスでも重要な場面で重要な役をやっています。怜が居なきゃこのストーリー面白くなかったと言える役回りをこなしています。しかもシリアスできっちり仕事してるのに、ギャグ担当も決して忘れず仕事し続け笑いを提供するスーパープレイヤーです。シリアスによって肉付けされたキャラが厚みをましていきます。作品が始まった頃の怜と終わった時の怜は別のキャラだと言えると思います。しかも原作では怜は居ないと聞きます。なお更京アニ独自のキャラ作りの仕事の成果を認められると思います。
後のキャラも良いんですよ。ただあまりに目だって怜が良いので、他のキャラも良いです。で閉めたいです。ああ敢えて凛に触れます。凛は原作から大きく改変されたオリジナルの動きを見せてるらしいです。どうやって使うか?で一番イレギュラーな使い方になったキャラだと思います。このイレギュラーさを上手く使ったシリアスキャラとしてのキャラ立ちがしっかりしています。作中ほとんどギャグ担当をやらずにシリアス一辺倒なので、このキャラかなり使いにくい。それなのにこのキャラ腐らせる事無くきちんとストーリーで目立つシーンを作れて居ます。やっぱ注目は凛のいわとび高校のリレーの解説です。元仲間の愛に溢れています…。アンド怜だけこき下ろし。今まで散々レベルの低いお前らたちとはやってられないと言っておいて、ツンデレかよって大笑いしました。
この作品がどんな作品かときちんと触れておこうと思います。表面上きっと黒子みたいな作品を想像した人が多かったと思います。私もそう思ってみました。おかげで最初期待はずれで…。でもそう考えた人に考えて欲しいのですが、1クールで黒子のようなスポコン作れるか?私冷静に考えてみると、ちはやふる(スポコン!)も黒子も2クールスタートだったんですよ。スポコン物は長期連載で積み上げていく試合の数々によって面白さを成立しさせています。1クールでそんなもの無理。
視点を変えて作らないと駄目。その中で遥を主人公にした話の流れは上手いです。これは素直に褒められます。当初泳ぐ事が好きでただそれだけで水泳部に居た遥ですが、試合を通じて凛や仲間との係わり合いで変わって行きます。遥は子供の頃、泳ぐ事が好きだったのではなくて、リレーと言う仲間と共に結果を掴む競泳が好きだったんだと思い出します。この流れは上手いです。当初、勝利至上主義の凛が出てくる事でその対抗として立つ遥だったのですが、勝利を目的に変わりました。でも凛が当初持っていた勝利至上主義と違う方でです。しかも同時に凛もこれに気がつきます。この二人の変化がこの作品の重要なテーマだと感じています。
テーゼ、アンチテーゼによる対立から生まれる、そのどちらとも違うジンテーゼって巧妙なストーリーに仕上がっています。(あんま弁証法詳しくないです…中2的な”アレ”です)
9話の時点何かを掴んだ凛が11話までに怜を絡めながらすっきりさせていく。しかしすっきりさせたと思ったらまさかの部長から駄目だし。口では分かったと怜に返した凛だけど、泳ぎを見ている部長から見ると何かが足りない、ここで主人公凛か?と言うぐらいのストーリーの動きを見せる。9話で遥にとってはピークを見るけど、怜を中継ぎにして上手く凛を絡める事でラストへの持ち越す流れを作り出してる。
ラスト面白かった。私はストーリーにはどんな王道にも意外性が必要だと思ってる。王道だと見ててほんのちょっとでも意外性があるとニヤっと楽しめる。私はやられた。大会失格すれば良いんだ。コロンブスの卵とはまさにこれ。決して勝利を求める姿勢を馬鹿にするわけじゃないけど、たまにこういう作品があっても良いと思う。おのおのがもつ景色へのこだわり。ただレイの活躍が見られなかったのは残念。ここが不完全燃焼に終わる。って事はこれ2期決定でしょ?この後の部長の凛の泳ぎを見てわくわくした顔を重ねると今度はあれを自分のチームでやらないと。敢えて2期込みじゃなくてきちんと評価しますけどね、このラストで十分に堪能できた。
どんぐりの背比べと言いつつ私がこの作品をNO1に選んだのは、京アニが長い時間かかってたどり着いた今のアニメの形だからです。宮崎監督の引退と同時と言うのは感慨深いです。過去アニメがまだ未熟だった頃監督がすべて作っていた時代があります。今はそういう時代じゃないです。アニメオリジナルはアニメの形としてあまり良い形だと思いません。原型である原作をアニメ用にアレンジして提供する。そういった現代のアニメの理想の形を完成形として提供できたと思います。でも出来たら京アニが得意とする京アニ大賞を取った魅力のある原作を忠実に美麗映像でアニメ化した作品も見たいですけどね。