ぱこ さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
30分があっという間に感じられる濃厚な作品
王道的な刑事ドラマ風のシナリオをベースにSF上のディストピア的世界観の上に構築されたサスペンスアクション作品。
人間の日常生活から人生設計まで至るところすべてを機械が統率するというありがちな設定でありながら、その実態や実生活をリアルにあらゆる角度から描写することに成功している。
それもこれも、2クールに及ぶ時間の尺と綿密に練られた構成によるものだが、序盤しばらくは「新米警官・常守朱の日常」といった体で進むので、シビアな作風を求めて視聴された方は若干ダレてしまうかもしれないが、決して断念せず最後まで結末を見届けてほしい。
ただ、予め制作陣から「この作品は社会の不条理やシステムに真っ向から挑むといった趣旨の物語ではない」といった説明がなされている通り、作品の根底である統制社会に対して様々な主張や問題が提起されても、それに明確な解決策や転換が訪れるわけではない。
むしろ客観的に見ればこの作品は、狡噛慎也を主人公と捉えるとすれば、宿命の敵であるシリアルキラーを執念で追い続ける刑事の復讐と清算の物語であり、常守朱を主人公とするならば、社会や自分自身のあり方に疑問を投げかけながらも、それぞれの揺るがない信念を持った人々に触発されて成長していく新米刑事の物語でもある。
よって、結末もまた予定調和的であった為に消化不良気味に感じられる部分があることは否定できないが、決してそれまでの道程を無価値に感じさせるような退屈なストーリーだとも思わない。
穏やかな日常に潜む犯罪の脅威、社会秩序を背負う立場にある人々の葛藤と成長、そして息もつかせぬ臨場感、視聴者を驚かせ続ける急展開。まさに往年の刑事ドラマのセオリーを上手くアニメに反映させた類まれな良作だと言える。
是非とも極力ネタバレや事前情報は絞った上で、最初から最後までハラハラドキドキ楽しんでもらいたい。