退会済のユーザー さんの感想・評価

4.2
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 5.0 音楽 : 3.0 キャラ : 5.0 状態：観終わった

タイトルなし

今まで、日常系のアニメは得てして現実逃避に成りえるモノばかりだった。
自称ぼっちがなんだかんだで美少女に囲まれたり、非リア充に見せかけて立派なリア充民だったり、どんな設定や舞台にしたって結局のところ、画面の向こうに広がってる世界は僕らにとって夢のようなものだった。

それが、この作品はどうだ。こんなにも羨ましくない世界があるか。あってたまるか。
でも、生まれてしまった。深夜アニメを観ている大半の人に通用してしまうあるあるネタを笑いの題材に持ってくる。こんな悪趣味なものはない。
しかし、悔しいことに面白い。嬉しいことに、面白い。
この作品の主人公もこっちは、僕ら以上の痴態を次々と魅せつけてくれる。コミュニケーションが苦手だったり、心の中では嫉妬とコンプレックスを剥き出しにして相手を見下したり、しばしば妄想に耽ったり……。彼女の言動の全てが僕らに心当たりのあるものであり、同時に彼女の言動の全てが僕らを超えるものばかりだ。

もしもこの作品の主人公が僕ら程度の半端なスペックならば、笑いになんかならない。僕らそのものなら、笑ってなんかいられない。
下には下がいるんだと、僕らは彼女の痴態を笑い、安堵する。後ろ向きな方向で、希望が湧いてくるんだ。


この作品は彼女の奮闘記であり、現在進行形で紡がれていた黒歴史だ。
だけども、成長物語ではない。というか成長物語である必要は無い。
何故なら、もこっちの短所は同時に、個性でもあるのだから。
妄想癖も、内弁慶も、コンプレックスも、別に治す必要はない。だって、治さなくたって彼女を見てくれてる人はいるんだもの。
「凄い」と言ってくれる優や、「可哀想」と思ってくれるいとこや、「可愛い」と見守ってくれる今江さん。
変わろうとするけどドジが祟って黒歴史級の出来事を重ねてしまう、そんな【いつもなにか必死で目が離せない】もこっちのことをこんなにも見てくれる人がいる。(どうでもいいけど、橘田あずみさんの怪演に対して花澤さんや釘宮さん、野中さんを当ててくるのは卑怯でしょうよww)

もこっちが一人なのは別に相手を見下してるからでも勇気が足りないワケでもない。単にコミュニケーション能力に乏しいだけで、そしてそれは欠点とはまた別の話。
なんてことはない、タイミングを逃した。とことん間がズレる。それだけだ。それを彼女に非があると言ってやるのはあまりに酷だ。

そもそも、変わろうと思う前の彼女は自分の現実に不満を持っていたワケではない。彼女が黒歴史を重ねていく羽目になったのは、そもそも【変わろうとしたから】なんだから。
今ある現実を受け入れれば、なんてことはない。
実際、中学を卒業しても交流が続いてる友人がいて、オタクカルチャー満喫してる時は現実のことなんて忘れて、なんだかんだ学校だって毎日通えてるじゃないか。

リア充になろうとしなくたって、構わない。優と普通に喋れるんだから、つまりは同じ趣味の人とならきっと普通に話も出来るんだろう。
自分の手の届かないところへ手を伸ばして醜態晒すぐらいなら、自分の手の届くところでふんぞって「どうでもいいわ」と笑い飛ばしてやればいい。
未来の為に頑張って現在が暗くなるぐらいなら、未来から逃避し、現実を楽しんでしまえよ。
そう言うかのようなラストに、不覚にも憧れのようなものを抱いてしまった自分がいる。

どうせ、苦労するのは一緒なんだ。今苦労するか、後で苦労するかの違いしかない。だったらと、もこっちはあとで苦労する方を選んだんだ。少なくとも、今は無理なんだ。
そもそも高校一年生の段階でコンプレックス克服とか無理だし。妄想大好きなお年頃だし。思春期なんだから偉そうで当たり前だし。

この作品は、非リア充は行動しなければどこまでいっても非リア充であると主張した。……ように見せかけて、単に運の悪い女子の日常を面白おかしく描いただけに過ぎない。
でもこの作品を観ている僕らにとっては反面教師にしてリア充になるべく行動するか、それともこの作品をバイブルに今を楽しむことにするかの重要な判断材料だ。
どっちを選ぶかは、観た人次第。
だけどもきっと、正解なんて存在しない。
…………そう信じたい。


いや、決して、自分を肯定したいが為にこんなこと言ってるんじゃないんだよ?←