にゃっき♪ さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
Will You Be Staying After Sunday
神に捨てられた世界。
それは子供は産まれなくなり、人は死んでも、墓守によって埋葬されない限り、死者として生前と変わらず自我を保ったままでいられる世界です。
父を知らず、墓守だった母と死に別れ、村人たちに可愛がられて育った墓守の少女が、故郷を失い「世界を救う」ために冒険の旅をする物語です。
死者の街のエピソードで、勝手に街を出歩く主人公には不快感を感じることもありましたが、魅力的なキャラも少なくないので、あっという間に完走できました。最初から説明が致命的に足りないのですが、三話に及ぶ最初のエピソードを越えられれば、先が気になる展開も多く、意外性や感動もあるストーリーは、かなり楽しんで視聴出来ると思います。
墓守ですが、これは職業ではなく、同じ顔の成体が一度に大量に現れるアンドロイドのような人に似通った生命体で、死んでも死者にはならず、専用のスコップを持ち歩いていないと人と区別がつかないように見えます。物理的な破損が多ければともかく、死者も生きている人と見分けがつきませんが、墓守には死者を感知するレーダーのような能力があります。
主人公の母はかなり変わった墓守だったようで、普通の墓守は感情表現が希薄で、他の墓守のテリトリーでない限りは、問答無用で死者を探しだし埋葬するための機械のような存在のようです。
とても独創的な世界観だと思いますが、私はこの作品世界の設定があまり好きになれません。
死者になると、歳をとらないばかりか自我を保っていられるのでは、生とのバランスが悪く、生きている意味が軽く描かれてしまうのが気になったからです。子供の生まれない世界で、子供や孫の成長を眺める楽しみもなく、歳をとり家族の介護を必要としてまで生に執着しても、誰でもいずれは死ぬときがきます。死んだら確実に死者になり、自我の崩壊のない死者を通り越し墓守の世話にならなければ、安息は訪れないのがわかっているんです。これではもっと早い段階で自ら望んで、第二の人生を受け入れるように死者になる選択をする人も少なくないと思えます。比較する生が、子孫に何かを伝え何かを残すことを許されない生ではあまりに過酷です。
現実問題、限られた生を生きることは取捨選択の繰り返しです。リセットが効かないゆえに残酷な現実も受け入れ、支えあい励ましあって、すべてを乗り越えて先に進む姿勢が尊いように思います。
心の底から強く願えば異能が使えるようになるのもどうかと思います。現実とは違ってそんな願いが叶うなら、ちゃんと神様がいるようですし、不老不死やブザービーター(狙いを外さずに物を飛ばす能力)を手に入れた異能者は後悔すら感じています。続編では必要な設定なのかもしれませんが、1クール視聴した限りでは、ありふれた奇跡はかえって邪魔になるように感じました。