ぱるうらら さんの感想・評価
4.7
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
驚異的な口数の多さ
『四畳半神話大系』は小説原作、1クール(全11話)の大学系・青春コメディアニメです。
作画が特徴的過ぎただけで視聴を懸念したが、いつか観ようとこの作品に目を付けたままにあれよあれよと1年が経ち、その存在を綺麗さっぱり忘れていた私は手の施し様のないアホだった。
それはさておき、こちらはチープな感じのギャグではなくインテリチックなコメディで笑いを取る作品。故に登場人物達の、特に主人公の言葉使いが達者。と言うより話すテンポが早い、速い過ぎる。そして口数も多いときたために意識をちょっとでも離すと聞き逃してしまう始末。しかし、似た展開を繰り返すというこの作品の特徴の影響もあって、回を重ねる毎にその早さに慣れて聞き取れるようになる。人間ってやつは不思議である。
会話がとてつもなく早いだけでなくそのテンポも良い。一呼吸置くのも憚られる無駄の無い対話。故に一度に何話も観るとちょっと疲れる。しかし、このとんでもない速さで成立する会話のキャッチボールの的確さとテンポの良さこそこの作品の魅力であろう。
そして、登場人物は誰も彼もがあくが強くてキャラが濃い。爽やか系は皆無で、まるで悟りを開いたかの様に落ち着いている仙人のような人物もこの作中ではとんでもない曲者。そもそも曲者しかいない。多くは、誰かと誰か共鳴しあって始めて彼らのキャラは輝くと言うが、この作品の登場人物達は単体で既に輝いている。特に主人公はツッコミとボケを両立する使い勝手の良い珍しいキャラで一際輝いていた、主人公だけに。その腕前は一級品。
物語展開は少々変わった構成。何度も大学1回生に戻り似たような話が展開されるため、マンネリ化を危ぶんだがその心配もなかった。中盤(第6話~第8話)の展開はややしつこかった。しかし面白くはある。終盤は驚異的な速さで伏線回収をし、そこでは想像よりもずっとシリアスな展開をしていたため、主人公に感情移入していた私にとっては少々胸を締め付けられる場面だった。
あーだこーだと色々書いてきたが結局の所、大本のトーク(会話)が面白い。トークだけでも十分に観る価値はあるだろう。
ここからは蛇足。
「リセット」これは素晴らしい言葉であり愚者の言葉でもある。どうせどの道を選んでも結果は似たようなものだ。其々の道を進んで自分が将来どうなるのかを分かった状態でリセットできるなら分からないでもないが、どれか一つを選び、それが中途半端な結果だったならば、どの道を選んでもきっと中途半歩な結果にしかならないだろう。いや、若しかしたら周りに感化されて変わることもあるのかも知れないが。
とかく人生は一度きり。結果を受け入れていくしかない私達は、「if」の存在など信じてクヨクヨしてはならないのである。もちろんその真逆も考え得るが。