コンス さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.5
作画 : 2.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
わずかな良心の在り処
この作品を見るたび、相当な精神力を必要としたため何度も視聴を中断した。
なぜここまでイライラするのか、精神力を必要とするのかわからないまま視聴を続けた。
最終回も近づいてふと腑に落ちたかのようにその理由がわかった。
主人公は世間や周囲に対して斜に構えているように見える。
だがそのように見えて彼は「諦め切れない」のだ。
世間・周囲・二人のヒロイン・そして自分。
だから、傷つくことがわかっていながらもその都度、問題に対して自分なりの解決法を実行する。
当然のことながら彼は傷つく、それでも彼は斜に構えつつ自分に出来る最善を尽くしていく。
さて諸兄にはオチが見えていると思うが、年を重ねた我々はどうだろう?
我々は日々理不尽に囲まれて生活している。
身勝手な同僚に作り笑いをしながら距離を取り、静かに堕ちていくように仕向ける。
叩かれ疲弊していく部下を自らの利益のために酷使し、消えていくその日まで手を差し伸べもしない。
わずかに良心の呵責を覚えながらも自己を正当化し「生活」のために己の精神を浪費する日々。
この作品は、己が内にささやかに残っている正義感、良心を見つめなおさずにはいられない。
主人公やヒロインたちの行為は「諦めてしまった」自分が忘れて久しい良心の在り処を再確認させる。
こうして自分や世間の在り方に対する激しい怒りが視聴するたび精神力を削っていくのだ。
この作品を見てただ楽しく見ていられる方は、あまりに幸せな人生を送っているか、あまりに麻痺してしまったのかのどちらかであろう。
中高生が見れば身につまされながらも世間と対峙する勇気が持てるかもしれない、社会人が見たら自分の在り様を見つめなおす事が出来るかもしれない。
己が力で立ち、精一杯己が周囲を守り、そして耐える事の大切さをいまさらながら感じるアニメ。
男女年齢不問で一見の価値あり。