じぇりー さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
アニメ版NHK大河ドラマ
と、呼んでも差し支えない作品だと思う。全45話。つまり1年間放送されたので、本当に大河ドラマのようだ。
本作品は「12の国からなる異世界」を舞台にしたファンタジー作品で、複数のエピソードからなり、エピソード毎に主人公格となる人物も変化する。
ただ、(原作ではどうか知らないが)いずれのエピソードにも、最初のエピソードの主人公となる陽子が必ず何らかの形で登場することで、陽子の成長の軌跡として全体を捉えることができ、アニメとして非常によくまとまっていたと思う。
ファンタジーものとはいえ、バトルや戦争ばかりが物語を占めるのではなく、政治的要素もふんだんに描かれており、その細部まで考え抜かれた世界観や設定(宮中の設定に関しては、古来の中国を参考にしたのだろうとは思うが)は、さすが小野不由美さんと言ったところか。
しかし個人的には、この物語は登場人物たちの「成長」を描くことを何より大切にしていると思う。
「生きる」ということ、自分のなすべきこと、役割…それらを主人公たちが様々な人物との出会いや出来事によって気付かされていく。
この作品は単なる娯楽的なファンタジーではなく、「人」としての在りようを問いかけてくれているように思う。
故に、人物描写・心理描写に重きを置いている印象があり、比較的ゆったりと物語は進んでいく。
エピソード開始時点では、まだ未熟な主人公たちが、苦難に遭遇すると、泣く・逃げる・責任転嫁する・裏切るなどの行動に出るくだりに結構ボリュームを割いているので、これに見ていてイラッとくる方もいるかもしれないが、最初から勇気と正義感に満ち溢れ、突然の環境の変化に速攻順応できる人など、どこにいようか。それこそ超人だ。
だから、1年間ゆっくりと大河ドラマを観るように、陽子たちの成長を暖かく見守っていきましょう、と私は言いたい。
個人的には「転章」という、エピソードを振り返る回があったのが、小説未読者である私には有難かった。
転章は単なる総集編ではなく、本編内では説明不足であった設定を補完するような役割も果たしてくれている。
これはおそらく、アニメの中で新しいワードが出る度、毎回説明を入れると物語の展開に支障をきたすので、まとめて1話で説明するという形を取ったのだと思う。
親切設計だ。この手法を同じくNHKで放送されていた大作小説原作の「グイン・サーガ」にも用いて欲しかった。(笑)