「空の境界 第一章 俯瞰風景[フカンフウケイ](アニメ映画)」

総合得点
76.7
感想・評価
1106
棚に入れた
6364
ランキング
686
★★★★★ 4.1 (1106)
物語
3.9
作画
4.3
声優
3.9
音楽
4.1
キャラ
4.0

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2S-305 さんの感想・評価

★★★★★ 4.6
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

「決定的なまでに欠落している何か」を感じさせる世界観の異色作

BDボックスにより視聴(原作かなり前に既読)、レビューもボックス収録全章分まとめてのものです。

決定的に欠落した何かを感じさせる独自の世界観と、叙情性を伴いながらもある意味退廃の極みともいえる「奈須きのこ」原作によるストーリーは、大手を振って称揚できる内容ではありませんが、「死」に対する独自の視点に基づく凄惨な描写や思考・思想は強い吸引力を持って観る者に迫ります。

「直死の魔眼」を持つ「両義式」を中心に描かれる「死」にまつわるエピソードは、極度なまでに刹那的なもので、かなり好き嫌いが分かれる内容なのではないかと思います。

心理描写についてもかなり特異な価値観に基づくものであるため、時に理解の範疇を超える行動原理に基づく行動などがありますが、独自のキャラクター性により観る者を納得させてしまうものがあり、冒頭で述べさせていただいた「欠落した何か」によるアンバランスな世界観が強烈な没入感を生み、この作品固有の形容しがたい魅力の源となっているように感じました。
ここでいう「欠落した何か」とは、本来あるべき「日常」や「常識」「倫理観」という一括りの言葉で表される根底的なもののみではなく、それぞれのエピソードで浮き彫りにされる登場人物の「生きる」ことへの能動性であったり、「死」に対する畏怖であったり、より直情的な禁忌とされるものへの肯定であったりと様々ですが、「欠落」により何かが大きく歪み、その歪を正に抉り出すかのように描かれており、非日常における痺れるような倒錯感にむせ返るような感覚を覚えます。

うまく表現できませんが、言いようのない「口当たりの悪さ」こそがこの作品の真骨頂なのではないかと思います。

また、BDでの視聴時の特筆すべき点として、一聴して「音の情報量が多い」ことに気付かされます。
独自の世界観を彩る重要なファクターとして、作り手側が「画像」のみならず「音」に対しても強いこだわりを持っていることがわかります。
数あるアニメBDの中でも現在のところここまで音の情報量が多いメディアコンテンツは無いように思います(24ビットリニアPCM収録)。

以上本編とは関係ないところにまで言及してしまいましたが、個人的には万人向けではありませんが、原作の持つ「未完成な危うさ」をも映像・音楽で見事に再現した、独自の魅力を持つ異色作・異能作として高く評価できる作品だと思います。

投稿 : 2014/10/16
閲覧 : 297
サンキュー:

8

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