arias さんの感想・評価
3.8
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 3.0
状態:観終わった
人を選ぶ奇抜な作風だが作品に合った素晴らしい演出
BSアニマックス無料放送枠にて
サスペンス/学園/恋愛/変態/ロトスコープ/原作漫画
◆議論を呼んだアニメ惡の華◆
2013年春アニメの、いや近年深夜アニメ界の問題作と言っていいだろうアニメ惡の華。全編ロトスコープで実写風のキャラクター画という不快さ。しかし決して目を引くためだけでなく計算された不快さだった。
◆二次元でありながら三次元◆
実写映像を撮影。その映像を元にトレースで描いたものをアニメーション化する。これがロトスコープという手法。
アニメ惡の華は実写映像を改変せずそのままトレースしている。トレースする際に顔のパーツだけ可愛らしい二次元風にするだとか、体型をスラっとさせるだとかそういう事を一切していない。描かれる何もかもがフィクションや美の希望がない、残酷な現実の世界だ。
演出もまたアニメ風ではない。アイキャッチもないし春日が空をとぶこともない。OPEDはキャスト制作陣の名だけが並ぶ。カメラ視点も人間が見ている位置で固定されている。まるで実写ドラマだ。
◆溢れる不快さ◆
アニメなのに実写ドラマを見ている感覚。佐伯奈々子も仲村佐和も原作絵からかけ離れていて、正直可愛くない。原作絵で動くのを期待していた人たちは失望しただろう。
暗く曇ったフィルターをかけたような背景も、メロディがなく低音の音楽も人を重くさせる。長ったるい背景の止め絵も歩行シーンもイライラさせる。
また、実写映像とアニメのコマ数(フレーム数)は違う。実写の場合一秒あたりのコマ数は30(TVデジタル放送等)。惡の華はリミテッドアニメーションなので一秒あたりのコマ数は8。ロトスコープで実写のようなものを見ているのに不自然にカクカクしているためとても違和感がある。
萌えアニメとは真逆。汚いものを見せている。心地よさはなくただただ不快さだけが残る
◆この不快さも惡の華には合っている◆
しかしこの不快さを感じるほどの雰囲気は惡の華にはマッチしている。惡の華は恋と過ちに葛藤する思春期の学生たちを描いた作品だ。モヤモヤした感情の思春期、山々に囲まれた街、誰も歩いていない錆びた商店街、『クソムシども』。閉塞感もうまく醸しだしている。
原作絵のタッチをそのままアニメーション化するのは物語の重々しさを表現できず生易しい印象になってしまうのを防ぐためだったんだろう。
◆制作陣の愛を感じた◆
ED後のエンドカード代わりに毎回、原作者の押見修造のコメントが入っていた。原作絵の改変に押見修造も承諾したということだろう。原作絵をぶち壊してでも原作惡の華の雰囲気を出したかったのだから、長濱博史にも押見修造にも作品への愛を感じる。
◆最後に◆
革新起こせるような素晴らしい作品を作れた。コアな(と言っては失礼かもしれないが)ファンというのもついたと思う。
ハッキリ言って商業的にはアニメ化は失敗だと思う。円盤もまず売れないだろう。
放送中も作品を評価する声はチラホラあった。けど評価するところまで行くためのハードルがあまりにも高すぎた。とっつきにくい作風で、春日高男の歩行シーンだけで切った人もいるだろうし。乗り越えれば面白いと思うのだけれども
造ることはできなかった。けど創ることはできた。
第十三話のラストは2期を匂わせるような幕の下ろし方だった。ぜひ放送できるよう期待しています。