無毒蠍 さんの感想・評価
3.3
物語 : 2.5
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
蔓延する妄想の連鎖…やがてそれは狂気となって全てを喰らう。
視聴後の率直な感想は自分には少々難しいというか
納得いかないところが多い作品でしたね。
今敏監督作品はいくつか観てきましたがパーフェクトブルー以外は
結構難解に感じました、考えるよりも感じる作品といったところでしょうか。
そしてそれは妄想代理人にも言えることです。
ミステリー的な何かと思って視聴をはじめたんですが
まぁいつもの今敏作品でした。
事件の発端は月子という女性が何者かに襲われ警察の調査に
金色のローラーブレードを履いて野球帽を被った小学5~6年くらいのの少年で、
くの字に折れ曲がった金属バットを振り回している犯人像が浮かび上がりました。
世間は彼を少年バットと呼び瞬く間に知れ渡ったのです。
そして第2~第3の被害者も続々とあらわれてしまい…
まぁタイトルである程度予想していたとはいえ結局は妄想の産物だったわけです。
月子が10年前に生み出した狂言から生まれた怪物。
結局月子は少年バットになど襲われてはおらず自分自身で傷つけた。
つまり自傷行為だったわけです、そこはある程度予想していたのでいいのですが
所々説明不足で意味不明に感じてしまいました。
少年バットは妄想の産物だというのに少年バットに襲われた被害者は続々といるんですよ。
ここらへんの説明が特にされておらず投げっぱなしになっていたのが気になりました。
私なりの解釈ですがタイトルで「妄想代理人」とあるように
月子の妄想から生まれた少年バットというキャラクターを
被害者の人たちが引き受けたということでしょうか?
少年バットは追い詰められた人間のところにやってきます。
少年バットにやられた被害者たちは追い詰められ気持ちのやり場を失った時、
月子と同様に少年バットという妄想の産物を利用したのではないか…
これまでの被害者も月子と同じように自傷行為に手を染めたんじゃないかと思いました。
少年バットを生んだのは月子だけど育てたのは少年バットに縋った者たちすべて。
少年バットとは他ならぬ自分自身の弱さだったのかもしれません。
被害者のなかで唯一少年バット(自分の弱さ)に打ち勝った人物が猪狩美佐江である。
彼女は目の前の現実から目を背けそうになるが最愛の夫が心の大きな支えとなり
少年バットを退けたのです、この話は美佐江と少年バット、
つまりは美佐江の心の葛藤が描かれたシーンだったのではないでしょうか。
今敏監督作品といえば現実と妄想の区別がつかないその二つが入り乱れた演出を多用しますが
それらの演出は妄想代理人でも健在でした。
中盤あたりからそれらの演出要素が強くなり終盤では完全に現実と妄想の境界がなくなってましたね。
なのでちゃんとしたミステリー路線を期待すると肩透かしにあいます。
正直中盤までは楽しかったですが終盤になるにつれ妄想要素が強くなってきて残念です。
終盤の展開は自分からしたら台無しに感じてしまいました。
最初の雰囲気を維持してほしかったんですが何かもう現実と妄想がごっちゃになって
意味不明なことになってます…
ミステリーというよりはミステリー要素もあるエンターテイメント作品です。
【B+75点】