Lovin さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
見た感じ
■概要
YouTubeで視聴。
社会人となって一人暮らしを始めた主人公が、仕事に追われ付かれきって帰宅したところに父親からの電話が入るという導入になる。
本作品は5分程度の短編映像である。何らかのイベント?に使用された映像らしい。急に次々とレビューが上がってきたので私も書いてみた。
■主な登場人物
本作品は短編であり見ればわかるしネタバレになるので登場人物は書かない。
■感想
視聴前の期待度は3段階で★★と普通。普通と言いつつ新海誠監督作と聞いて少し期待してみたが、期待にこたえてくれる出来だった。
今回は本当に長文でネタバレ{netabare}
最初ストーリーテラーが猫のミーさんだとは気付かず母親なのかと思っていたが、本作品に母親はほぼ登場しない。ミーさんは亡くなる事になってしまうが、幽霊というものがあるとするならば、幽霊が回想しているという視点で全てを見渡しているかのように語られているのが物凄く切ない。
あーちゃんは成長するに連れて徐々に父親を避け始めるが、これは子供としては普通の反応、ましてや女性ならば男性よりも拒否反応は大きいのではないかと思う。だがあの年齢までそれが持続するものなのだろうか。疲れ切ってはいても、いやだからこそ父親に食事に誘われたら喜んで行くものではないのかと疑問は残るが、それすらも億劫なのだろうと解釈した。
そしてお父さん、そんな娘の気持ちを思い遣れる凄い人格者だ。アパートの近くで電話した後、消費されることの無くなった二人前の弁当を手に家路に付く背中は、子育てを終えた安堵感など無く、娘に会えない寂しさ、親離れしていく娘に対する焦燥感に似た悲しさが滲み出ている。
ミーさんが亡くなった後、食卓でお父さんが放った一言はかなり重い。愛し合って結婚したはずのお母さんよりも、自分がつらい境遇にあっても思い遣れる大切に育ててきた娘よりも、ミーさんが亡くなったことが一番辛いなんて、言葉通り受けるべきではないが、巣立って行った娘の代わりに引き受けた世話係をするうち、逆にお父さんがミーさんに依存していた事実が伺える。
結びの部分でお父さんの新しい「彼女」を見に来るあーちゃん、二人を見ながらあーちゃんの幼い頃を懐古するお父さん、不意にチャイムを鳴らし帰ってくるお母さん、奇しくもミーさんが亡くなったことを乗り越えて血を分けた家族が再び一つとなる。それを見届けたミーさんが安心して永眠したであろう心境が「それでも、幸せはきちんと続いていくと、あなた達はもう知っている」の一言に詰まっているように思えた。{/netabare}
今まで新海誠監督に対して持っていた印象が全く違ったものになった作品だった。といっても2~3作品しか見ていない訳なのだが、ネガティブな結末しか迎えることの無いものだと思っていた。短編で悲しさ以外の理由でウルッとしてしまった自分が少し恥ずかしい。
それに記憶が鮮明ということも否定しないが、この短編でこれだけの言葉が溢れてくる作品も、私にとっては珍しい。何気なくありそうな物語だが、それをこれだけ情緒豊かに描く新海誠監督はやはり凄い。新海誠監督作品が特別好きというわけでもないが、この作品には一言で表したくないものが山のように詰まっているように思う。
■作品の傾向
本作品は短編な上無料で見られるので、老若男女問わず全ての方にお奨めする。若い人には若い人なりに感じるものがあるだろうし、子育てを終えたような年配の方には共感できる部分も多いだろう。
■蛇足:{netabare}
それにしても相変わらず小川真司さんは言い声をされている。
因みに、私にも姉はいるが、その姉があーちゃんと同じだったのかどうかはわからない。
今でも父親を憎んでいるくらいだからもっと違う感情がある(大体わかるが)のだと思う。
しかも一家離散に近い状態で、勤めていた看護師を辞め占い師になると言い出し現在音信不通だ。
{/netabare}