雷撃隊 さんの感想・評価
4.0
物語 : 1.5
作画 : 4.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
ヤマトの分裂はそもそもこの作品が原因
やたらと過大評価されているけど、皆殺しのバッドエンドを美辞麗句で飾り立てた悪趣味で気色悪い映画だな、というのが第一印象でした。あれほど生き抜くことの尊さを強調した第一作とは真逆でなんか違う、松本ってこんな終わり方する人だったっけ??999やハーロックとも違和感があるし何か変だ、と思っていたらこの違和感の正体が西崎義展という人だと知ったのは何年か後になってからでした。ヤマトはそもそもコミックが原作ではなくオフィスアカデミーのオリジナル企画で松本、西崎の共同原作だったわけで、後に裁判が勃発します。「さらば」の時、松本零士は皆殺しには反対で「生き残って復興の苦労を描くべき」「若者は生きて未来を繋ぐべき」と主張したそうな。私もこの意見に大賛成だったのでTVシリーズ2の方が好きです。14万8千光年の苦難の旅から帰還した後の2度目の航海で皆殺しではお先真っ暗で前作の感動も台無しです。
よく本作は特攻を美化しているといわれるけど、はっきりいって戦争映画の特攻ではなく任侠ヤクザ映画の滅びの美学ですよ。東映が高倉健や鶴田浩二を使って10年同じパターンを繰り返した挙句飽きられて深作欣二の「仁義無き戦い」に取って代わられた「非牡丹博徒」「昭和残侠伝」なんかの世界を宇宙に再現ですよ。「さらば」を名作と主張する人は「非牡丹博徒」を連続10本見たあとまだこれを名作と言えるのかな?西崎氏の
主張する「宇宙の愛」を「義理人情」に置き換えるとヤクザ映画の世界でっせ。ラストなんか「愛」についての精神論を長々と語るしもう宗教の説法みたいだよ。キャラを殺さず物語そのもので感動させるのって難しいんですね。第一作の時は出来ていたのに。
因みに実写の戦争映画で特攻を扱った映画では「さらば」と内容や精神論が被る映画はありません。「ああ同期の桜」「連合艦隊」「潜水艦伊ー57降伏せず」「人間魚雷回天」とか、特攻は権力者の愚かなツケを若い兵士が払わされる、という描写でした。ナルシズムや滅びの美学とはゼンゼンちがいました。
貶してばかりだったけど褒める箇所も沢山あります。
作画が大幅に向上。金田伊功氏の参入により戦闘に立体感が大幅パワーアップ。海から発進するヤマト、最高にカッコイイ。彗星に向けて波動砲発射~都市帝国のシーンは今見ても立体的で迫力満点だぞ。新型戦艦アンドロメダ、今みてもいいデザイン。流石松本零士。敵軍の彗星帝国(2199でドメルにやられてた黄緑の艦隊といえば分るかな)も存在感がある。戦後の米軍を連想させる艦船デザインもガミラスと好対照だ。行過ぎた機械化や平和ボケへの警鐘は確かに松本零士作品の共通のテーマ。デスラーもこちらの作品では魅力的だ。まさに好敵手の名に相応しい。2199のデスラーはこちらのデスラーを見習うべき。「私の心は君たち(ヤマト)に近かった」は屈指の名台詞。宮川さんのBGM,益々冴えます。「さらば」以後、敵軍のテーマ曲が作曲されるので、作品ごとの看板になってゆく。このあたりはシリーズ化のプラス面だろう。
褒める点と貶す点が半々だけど、リアルタイムで見た人が「これで終わればよかったのに」というのも理解出来ます。その後延々とシリーズが続き破綻してゆき、挙句の果てに会社倒産やら犯罪やら版権問題やら裁判やらと、「大人の事情です、お察しください」の代名詞になってしまうヤマトですが、今、復活編やら2199やらでかつての二の舞に陥ってますよ。もしかしたらリアルタイムの人たちもこんな気分だったのかな?と思う今日この頃です。