退会済のユーザー さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
胡蝶の夢
■不気味さを引き立たせる演出
静かすぎる街、かみ合わない話し、音もなく発車する電車、同じテレビのシーン、ゴゴゴという軋むようなSE、温泉先生と冒頭のあたるの同じような顔 など
■謎
あたるの家から登校する際に、しのぶをみているのは誰なのか。あたる?もしかしたら本当のしのぶは、あたるのいる別の夢の世界に行ってしまったのかもしれない。他にもたくさんあるがやめておこう。
■夢か現実か
結局最後はどうなったのかという問題について、私は夢から抜け出せたと解釈している。夢を作りだした張本人が提示した「夢から抜け出すための条件」をあたるはクリアした。さらにその後「それは夢だ」というセリフによって、本人に夢だということを認識させた。校舎も元々は2階建である。このように夢から抜け出したと取れるような情報は揃っている。さらに、ラストの鐘は冒頭の鐘とは音が異なる上に、冒頭の鐘とはニュアンスが違うと感じた。私には最後の鐘が新しい夢の始まりではなく、現実の朝を告げるものに聞こえる。
よって最後のシーンと冒頭のシーンは直接には繋がっていないと私は考えている。
しかし最後の鐘が不気味だとか、夢を抜け出せていないという解釈をしている方の意見も十分に納得できる。落ちていくシーンでは町の外側が描かれておらず、どうなっているのか確認できない。この作品はそういう風に自由に解釈できるように創られているし、結局どっちでもいいのだ。夢と現実は表裏一体、紙一重、あるいは完全に同義なのかもしれない。であるから、ラストが夢だろうが現実だろうが作品が伝えたいことは変わらないのだ。
■原作者の考え
原作者の高橋留美子さんはこの作品に否定的な意見らしい。アニメも原作も見たことが無いのでよく分からないが、それほどかけ離れた内容だったのだろうな。たしかにうる星やつらでなくてもこの内容のものは作れる。自身のうる星やつらを土台にされて、原作者は私の想像も及ばないような感情に苛まれたことだろう。
■監督の考え
ラストでこの作品のタイトルが出てカメラが引いていく。いや、退いていく。するとタイトルがぼやけていき、最終的に見えなくなる。監督自身は「この作品がうる星やつらとかけ離れている」ということを自覚しており、それを表現したかったのかもしれない、と私は勝手に解釈している。天使の梯子が掛かっているのは原作者への精いっぱいのエールと「Good luck」というメッセージかもしれない。
たしかに原作を作りかえるような行為はあまり感心できたものではない。しかし自分を貫く姿勢は尊敬できるし、この作品に強いメッセージ性が込められていることも評価できる。両方の肩を持つ優柔不断な私であるが、あの夢の世界でどう動くだろう。あたる達のように呑気に遊ぶだろうか。それとも面堂のように足掻くだろうか。
好きなセリフ「お兄ちゃんはね、好きなひとを好きでいるために、そのひとから自由でいたいのさ」