退会済のユーザー さんの感想・評価
3.8
物語 : 4.0
作画 : 3.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
タイトルなし
本作の面白いところは、とことん同じで真逆な主人公とヒロインの存在。
八幡は、なにか行動を起こす度にどんどん自滅していき、やがて自分から何かをすることを止め、ぼっちになった。
一方、雪乃は生まれ持った才能や家庭から、自身が何もしていないのに孤独となっていった。
結果、八幡はぼっちであることを受け入れ、雪乃は周りを変えようと考えるに至る。
この両者、ぼっちになった経緯もその解決方法も真逆だけど、根本にあるのは同じ。
つまり、自己保身。八幡は周りに期待することを止め、自分の殻に閉じこもった。これ以上傷つくのが嫌だから。
そして雪乃は、自分という存在を認めてもらいたい。だから奉仕部として活動していくという選択をしたのだろう。
それは、ユイに対する接し方でも瞭然となっている。
雪乃は友達と言ってくれたユイにデレデレだが、八幡はユイの好意のことごとくを跳ね除けようとする。
となれば、本作は雪乃の物語として観るのが正しいと言うか、楽しい。
結局、本作で八幡の考えが変わることはなかった。「やはり俺の青春ラブコメは間違っている」という断言が有耶無耶になることさえ。これからも八幡は、間違い続けるんだ。原作が未完だから仕方ないとはいえ、それが、個人的には残念。
だって、八幡はどう考えても良いヤツだから。少なくとも普通の青春ラブコメを謳歌してもいい程度に。
だって、本当にぼっちでいいなら、奉仕部として活動なんてしないし、したとしてもわざわざ自分に罪を被せてまで誰かを助けようなんてしない。あの方法は、まず雪乃では100%無理な方法ばかり。あらゆる人から「最低」と罵られ、唯一「最高」と言ったのはあの鉄仮面陽乃さん……。
だけど、そんな方法でも確かに救える人はいる。だから、それをやった八幡を良く思ってくれる人がいてもなんらおかしくないんだ。
彼が自身を取り巻く環境を享受できる日を、いつかアニメで観れたらいいんだけどなぁ……。
一方、最高であるがゆえに最悪のレッテルを周囲に貼られてきた雪乃の物語としては上々、どころか出来はかなり良い。特に12話のライブシーン。ユイと肩を並べて笑顔でバンド演奏する姿はどこからどうみても友達であり、雪乃という存在が認められている場面であり、あれこそが彼女の求めた世界の一部だ。
そして同時に、このシーンを遠くから眺めて口元だけで笑む八幡がこれまたイケメンすぎる。だって、1話から積み重ねてきた八幡の行動がここにきて【雪乃を助ける】という結実にたどり着いた瞬間だから。(1話にて八幡が雪乃に言いかけた友達宣言はおそらく雪乃を救う為)
そして文化祭後、二度目の友達宣言。これは、1話目と大きな異なりがある。
でもやっぱり断られるんだよな。
「友達は無理」
うーむ、12話かけた結果、随分意味深なセリフとなりましたなぁ^^
あと、地味に平塚先生の存在も大きかったよね。ああいう、見守ってくれる大人を描いてると安心する。ちゃんと地に足がついてるというかね。
なんにしても本作は、とにかく八幡の存在が大きい。彼がいるせいで、まともなシリアスややり取りが滑稽に見えてしまうんだもの。
葉山とか普通なら「良いキャラやなぁ」とか思ってるところだろうけど、八幡の捻くれた一人語りにいつの間にか洗脳されたのか「ケッ、このイケメンが」と思いながら観ている自分がいた。
そして12話の相模さん説得シーンにしても、普通ならあれ、ヒロインと主人公のやり取りとして爽やかに、はたまた感動っぽく描かれるはずなのに、そこに八幡がいるだけで本当に白々しく見えてしまうからなぁ。ぼっち哲学パネェ。
さて、それはそれとして、細かい不満はある。
八幡のぼっち哲学は的確で素晴らしいものの、そもそも八幡のぼっち経緯が不明瞭だ。
彼の性格の良さは本編を観れば分かる通り、そしてぼっち道を極める以前(少なくとも中学生辺りまで)はそこまでひねくれていたワケでもない様子。少なくとも女子には普通に話しかけようとしていたし。
で、これでどうして八幡がぼっちになるのかが分からない。もちろん、運とかその辺が左右してくるものでもあるけど、少なくとも生まれてからずっと友達がいないという酷い遍歴になるほどなのかな、と……。
元からひねくれた性格してるのなら、それはそれで小町の口からでもいいから喋って欲しかったかなー。
八幡のリアリズムがあまりに徹底的で完成度が高いので(少なくとも八幡本人が一切自問しない程度には)、そのバックボーンはもう少し感じさせて欲しかった。
なんせ自分の過去をフィルム調にして流すぐらい俯瞰してるんだもの。
細かい欠点はあったものの、原作の良さをしっかり出しつつ、アニメとしても面白かったので、良作、と呼べる作品です。
それにしても、小町ちゃん天使。恋愛感情抜きの生粋のブラコンで、小悪魔だけど自分から「小町ポイント」と言っちゃうウザくない愛嬌もあって、非常に可愛らしい。作者が気に入るのも頷ける。
あと惜しむらくは、材木座が完全にただの中二病キャラでしかなかったことと、平塚先生の残念具合がだいぶん軽減されてしまっていたことかなー。