るぅるぅ さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
絶望からの旅たち~
全26話
ジャンル:漂流・ヒューマンドラマ
鬱アニメと名高い本作ですが、鬱というより極限状態に追い込まれた人の心理状況を描かれた作品。何者かによる陰謀に巻き込まれ事故を切っ掛けに宇宙を彷徨う478人の子供達。大人がいない過酷な状況下に誰が統率者として皆を引っ張り救助の日を迎えれるのか、その日はいつ来るのか不安を掻き立て恐怖へと移り変わり・・・。
終始陰鬱なストーリーラインとなっており、ギャグや微笑ましい光景は見られず艦内の限られた閉鎖空間を象徴する息苦しい世界観となっている。当然のことだが、ただ、生きたいと切実に願うのみ。自己中心的な思考に陥るが、操船する一部の者達に身を委ねることしか出来ない現状となる。そして謎の組織からの攻撃が拍車をかける、なぜ、殺そうとする?、なぜ、救難に応えてくれない?と苛立ちが募る。そして操船する者達への不満が蓄積され有限な食糧を奪い合う無法地帯へとなってゆく。滑稽としか言いようのない姿となっても他者への依存のみで生きたいと嘆く哀れな思考。危機に瀕して薄い協調性を見せるも非協力的な行動、ただ受け入れ命を託す現実逃避に甘んじる。醜い人間性が露呈するが、今の社会構造と察して変わらない。
どれだけ嘆こうが叫ぼうが一部の特権階級が牛耳るシステムとなっている。誰を支持すれば、どれだけ都合の良い日常となるのかのみ危惧する。未来のことより明日を生き抜くことが未来へ繋がる一個人の幸せとは別の話になる。
極限状態という環境下でどこまで自我を保てるのかが生き抜くことになると解釈している。見終わった後は主要キャラの変化が大きく望まざる成長となるが、主人公の行動力によって結末を迎える辺りもう一捻り欲しい所ではあった。過去から未来、絶望から救いとテーマは感じられるだけにさじ加減が難しいのだろう。
ただ、モブキャラのような主人公・昴治の目線で描く人の弱さ、兄弟の仲違い、アオイとの関係性、出来もしない理想論を並べた正論を掲げる姿は痛々しいが共感しやすく無力と痛感する現実との折り合いのつけ方は子供から大人への兆しとも感じられる。昴冶が最も得るモノがあった漂流生活になっていた。その他のキャラに対して表現すると、堕ちるところまで落とされ光明が与えられたぐらいではないだろうか。それぞれが本能的に隠していたトラウマからの脱却にもなっており負の群青劇にもみえた。
{netabare}
それだけにリヴァイアス事件を生き抜いたことは幸運であったといえる。ご都合主義としか言い様のないタイミングで助けだが、あのままイクミは昴治を撃ち殺しただろう、普通にしろと堰を切っていたが、こずえに姉を重ね生きぬくことで過去を精算したい隠されたエゴをかざすのだろう。恐らくあのままではイクミによる統率はできないだろう、昴治が死に奮起しデモを促し多数の推薦から祐希が統率することになるのかもしれない。
もしくは昴治がイクミを殺すケースも展開として一般的思想モブキャラの違う意味での脱皮も考えられたが、ファイナに取り込まれ宗教による救いと478人死亡フラグしかないだろうと変な妄想をしてしまった(笑){/netabare}
この作品は負の感情に触れ心を抉られる心理描写が多く辛く感じると想うが、人の本質を知った時あなた自身の答えが試されているだろう。それは極限状態に限ったことではないのだから・・・