STONE さんの感想・評価
4.1
物語 : 3.0
作画 : 4.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
長文でごめんなさい
原作は未読。
先に書いておくと、思ったことをダラダラと書いていたら、かなり長文になってしまい
ました。うまくまとめられない自分の文才の無さを痛感した次第です。
世界観や設定はそれなりに面白いものがあるし、キャラ造形も悪くない。
キャラに関して、特に重要役であるキリト、アスナ、リーファの演技は、凄くキャラを活き
活きとしたものにしてくれたと思う。加えて演技で印象的だったのは、オベイロンの下衆な
悪役っぷり。
作画はバトルシーンなどはしょぼい面もあったが、背景などは異世界感が感じられるもので、
なかなか良かったんじゃないかと。
更にBGMがスケールの大きさを感じさせるもので、非常に良かった。
第1話での掴みは良かったが、2話以降は外伝のような話ばかりが続き、「あれれ?」という
感じ。
単体としての話は決して悪くないが、本筋のようなものが描かれないと、大きなストーリーの
流れを感じ取りにくい。序盤でキリトがビーターとして自ら悪役を背負うような展開も、話の
作り方次第では凄く展開に変化を与えるものになりそうだったけど、それきり感が強かったし
なあ。
個人的には、もう観るスタンスを切り替えて、強い主人公が行く先々で問題を解決していく
時代劇を観るような感じで、鑑賞してました。
キリトが強すぎるというのも、他の感想では批判要素になっていたようで、確かにストーリー
性の強い作品で、主人公にピンチがないと面白みが無くなるものだが、前述のような割り切り
方をして観ていたので、それはそれでいいかなって感じ。暴れん坊将軍や松平長七郎が無双状態
でも批判されないみたいな。
まあ、本筋を描かないことに関しては、モンスター倒して、レベル上げて、ボスキャラ
倒して、階層攻略しての繰り返しで、描きようが無かったのかもしれないけど。
アインクラッド編に関して、第74層でいきなりラストバトルが始まってしまったのも、
かなりびっくり。
別にごていねいに第100層まで行けというわけでもないし、キリトとヒースクリフの
デュエルで、キリトがヒースクリフに疑問を抱く描写もあったが、もうちょっと色々な伏線を
ばらまいておいても良かったんじゃないかな。なんか打ち切り漫画のエンディングみたいな唐突
感は拭えなかった。
総じてストーリー性に関しては脆弱な印象が強かったけど・・・。
いい歳になった今はないけど、10代の頃はフィクション作品に関して、主人公に自己投影
するような接し方をすることが結構あった。
で、そういう接し方をすると、この作品は凄く楽しいんじゃないかと思ったりする。
ストーリー性の弱さに繋がる主人公の安定性も、自分と重ね合わせて観るとむしろ気持ちいい
ものじゃないかと。
これがいわゆる超能力や魔法が出てくる類の作品だと、所詮は非現実と醒めた部分も出て
くるのだが、この作品で描かれるバーチャルリアリティは将来的には実現するかも?と思わせて
くれるのが、また自己投影しやすいんじゃないかな。
凄くはまる人がいるのも判る気がする。
第1話とそれ以降の違和感に関しては、始めに「デスゲーム」の名の下に殺伐とした展開を
感じさせながら、それ以降そういった空気感が無くなってしまった部分もある。これに関して、
他の感想で批判する人が多かったみたい。
日本だと「バトルロワイアル」辺りから根付いた感のあるデスゲームもの。最近のアニメ
作品だと「未来日記」や「BTOOOM!」なんかがその範疇に入るのかな。
これらのゲームが他のプレイヤーを殺すことが勝利条件であるのに対して、この作品のアイン
クラッド編のゲームであるSAOはプレイヤーが死ぬことがあっても、他者を殺すこと自体は
勝利条件ではないわけで、いわゆる殺し合いを前提としたデスゲームではない。そう考えると
殺伐とした路線に行かないのもありかなと。
もっとも放映前、番組や原作のCMでやたらと「デスゲーム」を煽っていたので、そういう
路線を期待する人が、いざ蓋を開けたらがっかりという気持ちも良く判るんだけど。
個人的には、仮想空間であるSAOの世界を、これも一つの現実として捉えるか否かに
よって、各キャラの意思や行動が異なるという、むしろライフゲームの側面が強い印象が
あった。
ストーリー性とは別に気になったのが、脇役の使い方。
アインクラッド編に関して、結局のところキリトとアスナの物語といった印象が強く、男性
ならクライン、エギル、女性ならシリカ、リズベットなど、それなりに魅力のあるキャラを
出しておきながら、本筋にあまり絡んでこないのがあまりにも勿体ない。
逆に、その分キリトとアスナの比重が高かったわけで、この二人の距離感の縮まり方などは
割とよく描けていたんじゃないかと。
この作品SF的ファンタジー設定のアクションもの、バトルものといった位置付けの作品なの
だろうが、実際の描写部分の比重で考えると、むしろキリトとアスナのラヴロマンスものと
いった方がいいみたい。
キリトに関して、序盤においては実際に強くても子供がカッコつけているみたいな薄っぺらい
ものしか感じなかったが、アスナと結ばれて、守る者ができたゆえに、それを失うことの怖さ
からくる弱さが見えて、人間的魅力が出てきたように思える。これは次のフェアリィ・ダンス
編にも続いていくんだけど。
で、次のフェアリィ・ダンス編だけど、こちらはゲームで死んでも実際に死なないし、自分の
意思でログアウトできると、アインクラッド編に較べると緊張感は弱い。
その代わり、ゲーム世界での心情の変化が現実世界に影響を与える、逆もまた然りという
面白さがあった。いわゆるドラマ性という部分では、こちらの方が面白かった。
ここではリーファこと桐ヶ谷 直葉の心情が多く描かれており、心情的描写に関してなら
主人公のキリトより比重が高かったんじゃないかな。
ただキリトとアスナの純愛が大きな柱になっているため、アスナが死ぬとかしない限り、
直葉の思いの結果は見えているわけで、切ないと言えば切ない。
これは他のヒロインにも言えることだが、いわゆるハーレムものにはならない作品である
ため、どうしてもアスナ以外のヒロインが報われない感じ。
言葉は悪いけど、他にカッコいい男性重要キャラを何人か作って、キリト以外の行き先を用意
しておけば、と思ったりもする。これは前述の脇役の使い方にも繋がっていくことなんだけど。