くし さんの感想・評価
3.6
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
心に潜む思いと葛藤する 少女 達の物語
諦めたらそれまでだ…。
「自分の人生が尊いと思う? 家族や友達を大切にしている?」
「今とは違う自分になろうとなんか思わないことね!」
同じクラスに転入してきた魔法少女であるほむらは主人公であるまどかに言った。
その言葉の意味はまどかに魔法少女になることを思いとどませるためだ。
しかし当のまどかには何の事だか理解ができない。
まどかは、実世界の自分にコンプレックスを持っていたが
「こんな私でも誰かの役に立てて胸を張っていけるとしたら…」
魔法少女になることで自分のコンプレックスを消すことができるのではないかと考えたが魔法少女になる決心が付かない。
魔女と戦うのを前提として、魔法少女になることで自分の願いを一つだけ叶えてもらえる。
しかも、今までと違った強い能力を得ることができる。
魔女とは実世界に色々な不幸ももたらす悪で、表立って出てこないが、不運や不幸を陰で誘き寄せている存在だ。
先輩であるベテラン魔法少女が魔女を倒す勇姿に感動し、あこがれを感じた。
しかし、その先輩が戦いに敗れ悲惨な死を目の前にし絶望した。
そして魔法少女のつらい現実を初めて理解した…。
この物語は魔女との戦いのようだが、実はまどかや魔法少女達の人間心理の闘いが本来の意味を成している。
少女達の心に潜む思いと葛藤する姿をを描いたものだ。
きっと誰もあこがれで魔法少女になったわけではない。
なるべき理由があったから、やむを得ない事情があるからだ。
魔法少女になるべきか悩み、なってしまった事に後悔し、愛する人の為に自分を犠牲にして戦う。
魔法少女になるという誘発剤から因果した背景に、思い悩み苦しむ少女達の思い重さを受け止める事になる。
またこの作品は少女から大人へ成長する過程の「あがき」もうったえている。
少女とは成長途中の女性だという。
まどかの母はまどかに若いうちにどんどん間違いをしろとアドバイスする。
大人になってからは間違える事が難しくなるからだといった。辛いからだ。
含みのある言葉を投げ掛けた。「辛い分だけ大人は楽しいぞ」って。
少女達の心理描写について行けるか、悲しくて涙が出る情景でもない、重いのだ。
いっそ泣ける物語の方がどんなに楽かと物語の途中で感じた。
だが、それを全て吹き消す泣ける感動的ラストが待っている…。
絵風は芸術的で不思議な印象を与え、叙情的な表現力は異様で独特な雰囲気を醸しだしている。
すっごく見応えがあり、心に残る作品です。
〈おまけ〉
描写に残酷なシーンも存在する。しかし、視覚的にグロい描写ではない、心理的に襲いかかる残酷さなので、苦手な人も視聴をクリアできるだろう。
もっぱらアニメにはそういう残酷なシーンはよく登場するが、どんな時でも避けないでほしい。怪談ではないのだ。
どうしても話の進行には必要なのだ。
残酷なシーンを理解して初めて、その意味、重さ、尊さを実感できるのだ。決して避けてはいけない。
諦めたらそれまでだ。
だから、辛いけど、しっかり胸にお腹にその重みを受け止めて、その世界を一緒に体験してほしい。