OZ さんの感想・評価
4.8
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
そういうふうにできている
普段アニメを観ていない頃
何気なく手に取ってみたら
アニメにハマるきっかけとなった
学園青春ラブコメの傑作
■そういうふうにできている■
今作品のプロローグとエピローグに使われる言葉。
初めてパッケージを目にして感じた事は
「如何にもな雰囲気だな」と
絵柄に抵抗を覚えたものだけれど
すぐ改め直す事になった『とらドラ!』
序盤はありきたりのコメディ寄りなドタバタラブコメだが
シリアスへと様変わりする中盤から
ラブ色が一気に色合いを濃くし
ラストまで引き込ませる構成は時間を忘れる程。
特筆すべきは
主人公 高須 竜児とヒロイン 逢坂 大河が
最終的に両想いで結ばれるだろうと
ある程度予想のつく王道ストーリーを
更に定石通り展開するので
キャラクター間の関係性がより浮き彫りとなり
互いを想い合う心情が秀逸な点である。
流石は今作品の煽り文句通り
"超弩級ラブコメ"に恥じない物語だ。
一方で作品の評価を分けるのもキャラで
主に大河の自分勝手な暴力的行動や言動を
どう受け止めるかが境目となるだろう。
存在感を際立たせるとはいえ
この手の暴力的描写は
拒否反応が出る人もいるのは否めない。
したがって 大河を受け入れるかが
今作品の鍵である。
観たかった作品が丁度無くて
気まぐれと偶然が重なって出会った『とらドラ!』
もしも 手に取らなければ
アニメを好きになる事がなかったのかもしれない。
「そういうふうにできている」
大袈裟なのだけれど
きっとこうして巡り会えたって事は
そういうふうにできていたのだろう。
■オレンジとBGM■
作品を彩るのに音楽は欠かせない要素の一つ。
音楽面も耳に残る今作品。
前後期OP&EDのどれもお気に入りだが
特に後期ED「オレンジ」は
『とらドラ!』を代表する曲だ。
EDに入るタイミングや
次回予告へ繋ぐ流れに
引きの強さを強く感じさせられる。
中でも第21話「どうしたって」より
雪山にて意識の朦朧としている大河が
押し殺していた想いを竜児に知られてしまう場面から
EDへの流れは圧巻である。
21話以降 EDラストに「好きだよ」の一言が加わる
細かい演出もさりげない。
加えて「Startup」 「Lost my pieces」等
BGMの使い方が非常に効果的で
聴覚から場面を深く印象付けるのだ。
オレンジとBGMがもたらした
音楽面のインパクトは見事である。
■ハイライト■
名場面が沢山ある中で
特に魅入ってしまった場面を1つ挙げたい。
それは第16話の「踏み出す一歩」
大河vs生徒会長 狩野すみれの
互いに北村を想うが故の避けられない衝突。
「こんな事は間違っているだろうか?
間違っているのか わからない わかるのはただ・・・
この足は止まらないという事だけ!」
覚悟が込められた大河の台詞は
作中で最も印象に残っている。
女の子同士 素手の殴り合いは収まる事なく
お互い本音を激しくぶつけ合う
大河「あんたはただの臆病者だ 傷つくのも傷つけるのもあんたは怖いんだ
その臆病さが 卑怯さが 北村くんを傷つけたんだ
許さない 絶対 許さない!」
鼻からは血が流れ
怒りは涙となりながら
すみれに叫ぶ大河
すみれ「テメェに私のなにがわかる
テメェみたいな単純バカになれるんだったらなりたいよ
まっすぐ突っ走るだけのバカになれたらって思うよ
好きなんて言ったらあのバカ私について来ようとするじゃねぇか
私がそうして欲しいとわかったら私の為にそうするだろうが
色んなもんを犠牲にして あいつはそういう奴だ
だから・・・だから私はバカになれない」
すみれも顔中アザだらけにながら
単純バカになれない自分と
そうであるが故に
北村の想いを遠ざけなければならない自分との葛藤から
言葉も涙も抑えきれず力無く座り込む
壮絶なぶつかり合いの現場に駆けつけ
全てを受け止めた北村は
「会長はホントに優しい人です 心からあなたが好きでした
好きになれて恋をしてホントに良かった ありがとうございました」
北村もまた涙を流し 深くすみれに頭を下げる
北村を想う大河の心
すみれを想う北村の心
そして 北村を想っていたすみれの心
三者三様の恋は誰とも結び付く事なく
流した涙と共に終わりが訪れた。
北村の「ありがとうございました!」と
頭を下げるタイミングから流れる
BGM「Lost my pieces」がバッチリ噛み合い
声優さん達の熱が入った演技から
全てにおいて掴まれてしまったこのシーンは
今作品きっての名場面である。
他にも第18話「もみの木の下で」
粉々になってしまった星型の飾りを
竜児と実乃梨で元通りに修復する場面
第19話「聖夜祭」
気付いてしまった竜児への想いは
涙へと形を変えて
靴も履かず裸足のまま
悲痛な表情で飛び出す大河の場面
第24話「告白」
全てを知った大河を竜児と実乃梨で追い
竜児の唇に突き出した実乃梨の拳
「ジャイアントさらば!」後
自らの恋の終わりを確認するかの様
そっと拳に唇を重ねる場面等
まだまだ挙げたい場面は沢山あるのだけれど
きりがないのでこの辺にしておきます。
■あとがき■
笑ったり 怒ったり 涙したり
感情を直に鷲掴みされた感覚は
大河の木刀でぶん殴られた様な衝撃を受け
本編25話+OVA1話の全26話を
1話も余す事無く楽しめたよ。
散々自分の名前を喋れなかったインコちゃんが
最終回でようやく喋った時ですら
涙が止まらなくなってたな(笑)
観終わってから余韻が
一週間くらい消える事は無く
食欲30%OFF状態が続いたね。
初めてアニメのBDを買い
初めてライトノベルを読み
初めて声優さんのラジオを聴き
初めてドラマCDを手に取り
初めてアニメ作品のゲームをプレイした。
気づいた時にはすっかりハマッていたよ。
お気に入りとなった人に
是非とも耳を傾けてもらいたい1枚が
『とらドラ! Drama CD SP. 3 ~赤ちゃんと虎~』に収録されている
TRACK#8「いつかどこかの誰とも知れぬありふれた日常」だ。
わずか1分22秒と短い時間だが
その後の竜児と大河が描かれており
子供が生まれてあやす姿が何とも微笑ましい。
音声だけでも二人の幸せな笑顔が伝わってくるんだよね。
何度観直しても感情を動かされる作品で
出会えて良かったと心から実感する。
制作に携わった多くの方々
本当に素敵な作品をありがとうございました。
満足度 ★★★★★★★★★★ (10)