カミリス さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
ギャップが生み出す作品の良さ
主な舞台は、戦略的に重視されていない辺境の砦で、軍事ものにしては戦闘はほぼなく、比較的緩い作品となっている。
戦争という重厚なテーマをライトに描き、人、音楽、訓練を通して、ちょっぴり切なくほんのり暖かい、忘れがちな尊いものをやさしくシンプルに表現している。それが、この作品における雰囲気の良さにつながっているのだろう。
ストーリーは全体的にスローペースで、ラスト2話で話が動いたと思った方も多いだろう。確かに2話で動いたのも事実で、起承転結のバランスが悪いといわれるのも分かる。実際自分も最初はそう思ったし、逆に全く動いてないなとも思った。
しかし2回目の視聴では、この作品はしっかりと起承転結バランスはとれていると感じた。おそらくこの変化は視点の違いだろう。
{netabare}
まず、この作品、世界観や設定の基盤はしっかりしているのに、明らかに話の比重がおかしい。日常部分がほとんどで、戦争といえる部分はそれこそラスト2話のみである。このことからわかるように、戦争という設定はあくまでサブで、物語を形作るためのスパイスとしての役割なのである。
しかし、そのスパイス部分がラスト2話で前面に出ているので、急にそっちに目が行ってしまいがちになる。大体、戦争は1話時点ですでに戦時中であり、ラスト2話でそれが止まっただけなのだ。なのでそこに視点を置いてしまうからスローペースに感じてしまう。(これが自分が最初に視点を置いたとこ)
つぎに、自分は小隊に視点を置いた。これは、主人公の加入→小隊の日常→先輩の離脱→先輩の帰還という感じで起承転結がしっかりしているように見える。しかし、そこに視点を置いてしまうと転結はほぼないのだ。背景を無視して、話だけをみると、最後までキャラの掘り下げをしている。つまり、起承どまりなのだ。この視点での転結は、離脱後のクレハの方も書かないといけない。
つまり、起承転結のバランスが悪いと感じてしまうのは上記二つの視点がごっちゃになっているからだと思う。
では、バランスの良い視点とはどこかというと、それは"音"である。この作品のタイトルにもある通り、メインは音なのだ。
音との出会いがあり、憧れ、最初は苦笑されるほど下手な音だったが、音に対する姿勢を知り、人と音の関わりを経て、最後は戦闘を止めてしまうほど心に響く音を奏でた。
最近糞みたいなラノベのタイトルが増えたんで、タイトルの重要さを忘れてしまってた自分が悲しい。タイトルが重要ってあたりまえなことなのにね。
{/netabare}
戦闘やミリタリーに興味があり期待してた人には、かなり物足りない出来になっており、とても薦められるものではないが、ARIAのような雰囲気を楽しめる人なら観ても損はないだろう。