E4GLS さんの感想・評価
4.5
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
大仰な理想と人間臭さ
最低限、初代とZを視聴していないと作品の理解が進まないので注意が必要です。
スマートな秀作ではありませんが、議論する価値のある名作であることは間違いないと思います。
この作品の大きな特徴は、アムロとシャアの立場の二面性にあります。
1つの面は人類の革新という理想を持つ者の戦いだということ。人類に絶望し勝負を急いだシャアとそれをエゴだと言い放つアムロ。
もう一面はララァ・スンを大切に想った者たちの戦いだということ。ララァに希望を見出し、互いに嫉妬し合い、ララァの死の悔恨から抜け出せなかったアムロとシャア。
Zではわだかまりを超えて見えた両者が戦う本作からは、結局反発しあうしかなかったやるせなさ、人間臭さが滲み出ています。
そして物語の終焉も深い余韻を残します。
{netabare}表面的には、大規模なサイコフレームの共振の暖かさが人類の可能性を示したと捉えられます。しかしアムロの最後のセリフが「お母さん?ララァが?」というのが耳に残ります。人類の可能性の象徴ともいえるサイコフレームの共振の最中でもアムロはシャアの本心を理解できなかった?{/netabare}
このような理屈だけでは説明しきれない割り切れなさこそがこの作品を象徴していると感じます。私にはアムロとシャアの心の内の正解はわかりませんが、彼らの物語の集大成として思考する機会を与えてくれたこの作品に感謝したいです。
作画は時代を考えればハイレベルで生き生きとした戦闘シーンが描かれています。音楽も作品とよくマッチしていて非常に好印象です。
ただでさえ敷居が高く、宇宙世紀ファンにすら賛否両論の本作ですが、アムロとシャアの戦いの結末を是非観てみて欲しいと思います。