「神さまのいない日曜日(TVアニメ動画)」

総合得点
71.8
感想・評価
1075
棚に入れた
5695
ランキング
1270
★★★★☆ 3.7 (1075)
物語
3.5
作画
3.8
声優
3.7
音楽
3.7
キャラ
3.6

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ネタバレ

くろゆき* さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9
物語 : 3.5 作画 : 4.5 声優 : 3.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

そんな人々を助けるために、神様が最後の奇跡として遣わしたのが、墓守なのだそうです。

原作未読。

はっきり言って自分の中では3話で完結しており、4話以降は後日談や番外編というイメージ。
独創性のある設定、独特の世界観と雰囲気。一見して上質な作品。……なのだけど、蓋を開けてみれば、なんてことはないライトノベル原作でした。

本作は四つのエピソードからなる作品だった。その中で多くの登場人物が出てきたワケだけど、各エピソード3話ずつしかないのだから、正直、ゲストキャラにそこまでの魅力は望めない。
ならば、1クール通して出続けるアイ、ユリィ、スカーの描写に期待するのは当然の考えだ。
でも、僕には彼女らの内面が終始分からなかった。

アイは常に悩み続ける子だから仕方ないのかもしれないけど、それでも村のみんなを皆殺しにした人物相手にワリと平常心で接したり(年相応の喜怒哀楽以上の感情をみせない)、オルタすでは墓守は発見次第殺されると知らされてるにも関わらず危機感ゼロで街中で平然と仮面を外すし(少なくとも半分は墓守の血が流れてるんだからさぁ……)、とにかく言動が子どもっぽすぎる。
これは悪い点とは言い難いけど、いかんせん子どもすぎるかなと。

で、彼女、世界を救う為に旅をし始める。
彼女を通して「人は死ぬべきか。それとも生きるべきか?」を視聴者に問いかける形となっていた。
ハンプニーは言っていた。「お前を生かすただ一つの願いは“生きたい"だ」と。
じゃあ、生きたいのなら死者となって生きていいのか?
それとも、生きたいからこそ生者として死ぬべきなのか?

その答えを見つける為に、アイは世界を知ろうとする。
父親の生き様、オルタスの街、ゴーラ学園、そしてオスティア。
生と死があやふやになった世界とはどういうものなのかを、アイは知っていく。

で、その答えをアイは、最後の最後で【死者であるアリスの蘇生を願う】ことで示した。
多分、あれはアイが心底から願ったから起こった結果なんだと思う。
つまりアイは、前者を選択したワケだ。多分。
でも、劇中でアイがその結論に至るまでの過程がまるで描かれていない。
どう考えても、思いつきで願ったようにしか見えないんだ。
なんか「こういうテーマをやれば面白そう」って発想だけで作ってしまった感がひしひしと伝わってくるようで、少し、いやかなりげんなりとさせられる最後だったなぁ……。

一つ一つのエピソードを短くしてより多くのエピソードを見せようとした考え自体は否定しない。
でも、結局のところそれはアイには伝わってるのかもしれないけど、視聴してる側である僕にはとくに伝わってくるものではなかった。
エピソードや設定は面白いとはいえ。


キャラクターに話を戻すと、ユリィはハンプニーからアイを庇ったかと思うとその場で今度はそのアイを人質にとるという頭の悪さをみせつけ、決闘をすっぽかされたにも関わらずハンプニー救出に自ら乗り出すわ、アイがゴーラ学園で拉致られてる間になにがあったか「お前は俺が守ってやる。黙って着いてこい!」と言い出すまでにスカーを想うようになっちゃってるし、どこからツッコんでいけばいいのやら……; さり気なくスカーの肩に手回してんじゃねぇぞ。

そして典型的墓守とハンプニーさんから太鼓判を押されていたはずのスカーさんはオルタスでなんの脈略もなく想像妊娠いちゃってビックリ。普通ならばこのくだりで「想像妊娠は人が子どもを産めなくなってから急増した病」という説明で世界観を感じられたはずなんだけど、典型的墓守がなんの脈絡もなく想像妊娠したというシュールさの方が勝ってしまい、どうにも反応に困る。
そののちスカーはセリカを抱き上げで「この子は私の子です」と言うや、そのわずか2話ごには育児放棄。おい、墓守に感情はないって設定どこ行った……;
(そもそもセリカがスカーを呼んだ理由も不明だしね)

あとはユリィからのプロポーズになんの葛藤もなくOKし、幸せな生活を送りましたとさ。……どうしてそうなったん?
能登さんの静かな声と無機質なキャラの組み合わせならこの作品に合うと思ったのに、観てみれば普通にいつもの能登さんらしいキャラになってしまったし……。(能登さんに限らず、本作のキャストさんは全体的にアニメを意識しすぎな気も?)
ユリィさんの一番カッコイィところって、名乗ってる時だもんなぁ……。

で、あと個人的に解せないのがハンプニー。不老不死であるがゆえに誰よりも【生】と【死】に真摯に向き合い、強烈な人生を送ってみせた彼。
……が、アイが自分の実の娘と知るや、あっさり自分の中の正義に反して一日生き返るという行動に出てしまった。
作者がなにを考えてこの展開にもってきたのか不明だが、これはもう最悪だった。今までのハンプニーのセリフが全部、薄っぺらいものとなってしまったんからだ。

アイに想い出をもたせる為? 違うだろ、想い出って、作ろうとして作るものじゃなくね?
もうその人と会えなくなってから、その人との過去が想い出になるんだろ?
アイはあの時点でもう、自分の親とは知らなかったとはいえハンプニーとの数々の想い出をもらってたじゃん。
実際、そのあと旅先でアイは何度かハンプニーとの想い出を振り返るけど、その時の映像ってハンプニーが死ぬ前に彼と会話を交わしたシーンに限られてる。だったら、生き返って作った分必要なくね?


で、アリスの扱いについてもちょっと物足りなかった。
というのも、生き返ってしまった彼が、今後どうしていくかがまったく触れられなかったから。
彼は、願いは叶うべきではないと言っていた。
だから彼は、みんなを解放し、自分の死を受け入れようとしていた。多分、生き返りたいという願いを持ちながら。
でも、そんな彼の願いはアイによって叶ってしまった。じゃあ、彼は願いが叶ったその状況に対してどう向き合っていくのか?
それが描かれないのなら、生き返った場面など描くべきではない。


こういう感じで、終始キャラに入っていけないので面白みに欠ける。
とくにこの作品、その世界に生きる人らの姿や考えを魅せてこその作品なのだから、キャラの気持ちが分からないというのは、作品作りのうえで致命的な欠点だと思う。

それから、生者と死者という設定がありながら【死者に対する生者の一般的な対応や反応】、逆に【生者に対する死者の一般的な考え方】、そうした、世界観の足の部分が一切描かれずに語られるばかりだったことも、個人的には残念。
語るばかりで絵で魅せてないんだもの。それなら原作読んだ方がはるかにマシ。説明も描写もこっちよりあるだろうし。
結局、この作品の世界が見えてこず、終わってしまった。
基本的な設定の部分とその影響が、映像として表現されていないが、ちょっと残念かなぁ。
死者は段々と我が儘になっていくとか、腐敗してる姿とか、そういうのも出てきて良かったと思うんだよなぁ。

投稿 : 2020/07/10
閲覧 : 537
サンキュー:

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