らしたー さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
キュゥべえに尽きる
この作品のいささか不幸なところは、観る時期を逸するほど望まないノイズが混じってしまい、期待のハードルが過度に高くなったり、展開の流行り廃り的なズレやらで、コレジャナイ感がぐんぐん膨らんでしまうところじゃないかなと。
うろ覚えな部分はありますが何か書いておきます。
●キュゥべえに尽きる
自分の中ではとにかく、キュゥべえの描き方の秀逸さに尽きるわけです。
こう、幼い頃に読んだ『不思議の国のアリス』に出てくるチェシャ猫のトラウマが蘇ってくるような、何か。
言語的なコミュニケーションは成立するのに、
まったく別の世界を見てるんだろうなあという、あの恐怖。
事実上のディスコミュニケーション。
少女たちが泣いて嘆いて迷ってる脇で、キュゥべえは、ただその嗚咽を聞く。
聞いて何を思うでもなく、ただ、聞いている。
けして冷酷なわけではない。
彼の中で何も動くものがないから。
意識的にフラットなキュゥべえ演出には、洋の東西を問わない普遍的なセンスを垣間見た気がした。
そしてまた、家畜の話じゃないけれど、自分がそっち側(=キュゥべえ)を演じているという事実の示唆。疑問に思うことがむしろ疑問ですよ、という、あれ。
キュゥべえなりに、相当わかりやすく咀嚼してあげたんだろうなー、とか、あるいは彼にしたら「よくある質問」みたいなテンプレのお問い合わせなんだろうな、とか、まあ考えるだに空恐ろしい。
否定するロジックを持たないだけに、真に怖い指摘なのである。
●感情を持たないキュゥべえをたじろがせたまどかの決断
{netabare}
まどかの決断。契約。
キュゥべえは、今までないくらいの狼狽の色を示す。
あのとき、少女たちがキュゥべえに抱いてるのと同質の恐怖というか、絶望的な疎通性の欠如ってやつを、彼もまたニンゲンに感じてしまったんだろーなあ。なんだこの価値観の違うイキモノは、と。
なんていうか、その程度にはキュゥべえ視点で考えてあげなきゃいけないんだと思った。知的生命体のよしみとして。
そうじゃないと、あまりにワンサイドなお話に思えてしまうから。
ただ。
キュゥべえくんは契約内容の行間をよく読むべきだった。
キミは言っていたはず。
「どうして人間は魂のありかにこだわるんだい?」
まどかが言ってるのは、まぎれもなく「魂の在処」の問題なわけで。
{/netabare}
であればそう、今さら驚くにはあたらないはずなのですよ。
お茶目さんなんだから、もう。