エウネル さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
痛みとは何か?「殺人」と「殺戮」について。
空の境界第3章は「痛覚」をテーマとした話だった。この章は空の境界の時系列では3番目の作品になりますが、比較的に独立していて単体で見ても面白いと思います。
[痛覚残留のあらすじ]
人間の仕業とは思えないほどの連続猟奇殺人事件が起こります。死体は全て身体中ネジ切られていました。そんな中、「伽藍の堂」の所長である蒼崎橙子へ一つの依頼が来る。依頼内容は事件の犯人である浅上藤乃の保護、または殺害だった。その依頼を聞いた両儀式は浅上藤乃を止めようとする。
今回はキャラクターのセリフに注意してると、見終わったときに気づくことがたくさんあると思う。例えば、{netabare} 浅上藤乃の「痛い」という発言は「居たい」という言葉とかかっている。浅上藤乃は痛みを持たなかったので、生きている実感が持てなかった。だからどこにも自分の居場所がないように思っていたのだと僕は思いました。
また蒼崎橙子が浅上藤乃の殺人について「殺さなければ殺される。体ではなく心がね」という言葉がありました。僕はすごく的を得ている言葉だと思いました。痛みを持ったことのない浅上藤乃が痛みを得たとき、初めて生きている実感を持ったのだと思います。その浅上藤乃が殺すことで痛覚を得られるとそんな風に勘違いした状況、少なくとも浅上藤乃はそういう理由で動いているのかもしれないのなら、痛みを一度味わってしまった浅上藤乃はもう痛みのない自分には戻れず、心が殺されてしまうのだと思います。
式の浅上藤乃への許せないという気持ちはすごく式の考え、ポリシーがありました。式は「殺人」と「殺戮」を区別しています。理由もなしに大量の殺人をする浅上藤乃は「殺人」ではなく「殺戮」をしているということだった。万物の死について理解している式にはそれが許せない。でも浅上藤乃は痛覚を得たいから殺人をしているので理由はあるように思えますが、式はそれを否定します。浅上藤乃は単に殺人を楽しんでいる。式がそう言った時、浅上藤乃は不気味に笑っていました。それを見て僕は浅上藤乃は殺人に理由を付けていただけのだとわかりました。{/netabare}
今回も神作画だったのが、とても嬉しかったです。戦闘シーンはもちろん、雨や水しぶき、建物の崩壊、人がグチャグチャにネジ切られていく様子など本当に素晴らしかったです。水の描写を綺麗にするとすごく変わって見えると思うんですよね。躍動感が違います。
それにしても浅上藤乃は強かったです。{netabare} 式が左手を失いましたからね。てか左手を盾にするのはヤバイだろう。 {/netabare}
音楽もいつも通り良かったです。EDテーマは「傷跡」です。
EDテーマの題名までストーリーと関連づけるところがすごいです。BGMもそれぞれのシーンとあっていて良かったです。
今回も相変わらず作画、音楽、ストーリーの全てがレベルの高いものでした。その上キャラもカッコいいんですから文句がつけられません。最初に書いたように、この作品単体でも比較的楽しめます。
まだ1章,2章を見てない人も3章を見てしまってもいいと思いますよ。