じぇりー さんの感想・評価
4.6
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
新しい時代のヒーロー像がここに!?
タイトルでは到底予想もつかないが、なかなかに深い人間描写を描いた作品だった。これは、嬉しい誤算。
いわゆる「ぼっち」という、他人と迎合しないで一人行動を敢えて堂々と取る男子高校生が主人公。
彼はその冴えない外見とスペック故に、クラスメイトからバカにされ、弾かれ者扱いされているが、本人はそれを承知の上でそのレッテルの通りの学園生活を送っている。
そして、同じく他人と迎合することを嫌い、自身の理念だけを信じ行動するヒロインの一人は、美人で頭もいいことから、同じ「ぼっち」でも、どこか「高嶺の花」のような存在。
まずは、似たもの同士のはずなのに、「学校」という同じ組織にいることで、全く周囲からの評価が変わってしまうという点が非常にリアルだ。
主人公のぼっち故の面倒な学校のルールに辟易する心理には、「ここにも同じこと思ってた人いたんだ!」と思うほどに自身の過去に通じるものがあり、嬉しさと感動すらあった。
特に、{netabare} 体育の授業で誰かと2人1組になれ、と言われた時の面倒くささといったらない。このシーンはいわゆる「ぼっちあるある」なのだろうか。昔も今も変わらないなぁ。
そして、終盤で主人公がその性質を如何なく発揮した、学園祭エピソードが、実に爽快。集団の中で、浮かないように適当に周囲に合わせている連中を、いつも引きの視線で見続けてる彼は、そんな彼らの浅い心理をことごとく見抜き、敢えて悪者を演じて罵倒する。結果、ほとんど誰にも理解されることなく、嫌われ者になってしまっても、ヒロインを救うためにキレイごと抜きで行った彼の行動は、紛うことなきヒーローなのだと思う。{/netabare}
学校を出て、社会に出、会社組織に入れば…というか人間の集まる場所においてはどこでもそう、日本という国は。
自己を押し殺してまで組織に同調する人間ほど重用され、反対に自分らしさを失わず、個性を尊重している人間ほど、組織の弾かれ者として扱われる。だが、そのような人間ほど、するどい観察眼と、感受性、聡明さを持っていたりするものだ。
未来永劫実現不可能だと思うが、このような「ぼっち」が尊重され、理解される時代が日本に訪れることがあれば、この国の特に若者が抱える閉塞感を打破する突破口になるのではないかと思う。
なんだか壮大なレビューになってしまったわ…