ムーミンパパ8 さんの感想・評価
4.8
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
世の中に疲れちゃった経験がある人ならきっと泣ける!
作品の時間は短いですが凝縮された無駄のない数々の言葉と、圧倒的な作画。とても心を揺さぶられる作品でした。
(以下個人的なことです)
私も以前ストレスで会社に行けなくなったことがありました。ユキノが駅のホームで電車に乗ることが出来ずにうつむくシーンは、当時の自分と重なります。わずか地下鉄で二駅のところで足がすくみ、ときどき鳴るケータイにも出られず、ターミナル駅周辺の公園をとぼとぼと歩きました。お寺の庭の掃除をするお坊さん、コンビニでトラックから商品を慌ただしく店内運びこむドライバー。街は活気を呈しつつあるのに、自分だけはうまく歩くことが出来ませんでした。
映画の最後のシーン。ついにユキノが感情を前面に出して気持ちを言葉にすることが出来たシーンも秀逸でした。高校生の若いエネルギーが直接ユキノにぶつけられたことで、自分が職場に向かえなかったこと、タカオに癒されていたことが言葉にでき、その感謝を表現することが出来たのだと思います。
周囲への気遣いができる優しい人ほど、自己肯定感を下げられるような出来事にぶつかったとき、人生をうまく歩くことができなくなるものではないでしょうか。ユキノが電話をするシーンの後で「最近、嘘ばっかり」とさらに自分を追い詰めるのも私には痛いほどよくわかりました。
でもそれはきっと、自分自身の感情や思っていることを素直に表現して自分と向き合うことでしか癒されないのだと思います。そのときに素直に気持ちを伝えたい相手がいたユキノがうらやましいです。タカオに誠実に向き合うことで自分自身とも向き合える。そしてそれを見ていてくれる人がいる。うらやましすぎます。
本当に優しい人にとっていまの世の中はきっつい時代だと思います。そういう中でちょっと疲れちゃった人にこそ見てほしい、「セラピームービー」です。