芝生まじりの丘 さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
フェイバリットアニメ
【劇中劇】
自分は劇中劇が大好きだ。我々は映像作品をみるときPCや、テレビや、劇場のスクリーンをまんじりと見つめる。そのぼけーっとした様は外から観察していればさぞかし恥ずかしいものだろう、そういうことを自分はよく考える。また、自分はおたくとして、忙しい現実的日々の合間を縫ってせっせとアニメや小説の観賞に没頭する。その結果、現実においても、自分はその時はまっている物語に影響されて、ものを見る。また、当然、現実の経験も、物語の批評に影響を与える。
僕は日々現実を生き日常的なあるいはドラマチックな些事に追われ、同時に作品の中を彷徨っている。
一体現実の出来事と、フィクションへの没入、どっちが自分の多くを占めるのか、わかったものではない。
そんな傾向があるのは日々作品作りに奔走するアニメ制作者たち、あるいは俳優たちもかわらないだろう。
自分が劇中劇が好きなのはその物語と現実の倒錯が自分に親しいものだからかもしれない。
でも、アニメでこういう劇中劇ものって意外とあまりないと思う。声優や漫画家、アニメ制作の仕事にスポットをあてる作品などはある。でも、そういうアニメで学ぶ〇〇のお仕事みたいなのではなく、それを背景にメインディッシュとなるしっかりしたストーリーがある、という作品は少ない。あくまで、その設定をどう料理するか、という範疇のものばかりだ。もっと劇中劇、増やして欲しいなあ。
例えばアニメーター界での殺人事件、とか書いて欲しいなあ。まあ妄想代理人でそんな話もあったが。
【リアルな人間味とグロテスクさ】
自分はアイドル的なモノにはまったためしがないのでわからないが、アイドルというのは、多分アニメのデフォルメイトされた「可愛い」キャラクタのように(無論元来の個性というのはあるが)本質的に偶像的な可愛さが求められるものだと思う。そういった職をテーマに、人間以上に生々しい今敏らしいキャラクタデザインがほどこされ、そのコントラストが心地よい。
またこの作品には何人か本当に気持ち悪いキャラクタが登場する。美が芸術であるの同様、醜悪さも芸術たる。そういう存在感のあるグロテスクさを現実感とともにフィクションに内包させているのも好感がもてる。
【けして華美すぎない】
この後の今敏作品群は、個性的な画風がさらに洗練されカラフルになっていくように思うが、この作品ではもう少し穏当で素朴な画風。これがまた良い塩梅。
【総評】
とにかく自分の中ではアニメ作品の最高傑作。